JWF ファンド 2015 フォローアップを実施しました!

JWFファンド とは
Japan Water Forum(JWF)ファンドは、草の根レベルで水問題の解決に取り組む団体を支援することを目的に2005年に始まりました。この基金は、日本水フォーラムの会費やCharity for Waterに寄せられた寄付等で運営されています。
過去12年間で、156件のプロジェクトが実施され、アジア太平洋、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカで193,000名以上が受益しています。

フォローアップとは
フォローアップは、活動終了後に現場の課題やニーズにどのような変化が見られたか、活動の効果や影響を知ることを目的に実施しています。
フォローアップ二年目となる2017年は、JWFファンド2015で支援した6件のうち4件の団体の協力のもと、フォローアップを実施しました。
JWFファンドの支援により、プロジェクト実施地の子どもが学校に通えるようになった、水と衛生に関連する病気が減った、女性の生活が変わったなど、様々な変化が見られました。

報告書
JWFファンド2015フォローアップ 実施報告書 (日本語) (PDF)
JWFファンド2015フォローアップ 実施報告書 (英語) (PDF)

JWFファンド2015の活動とフォローアップ結果概要

1. ダッカのスラム地域における雨水管理によるWASH*1の改善(バングラデシュ)
(1) JWFファンド2015 プロジェクト概要

・実施団体:Bashaboo Friends Association (BFA) (#006)
・活動名:ダッカのスラム地域における雨水管理によるWASH*1の改善
・実施地:バングラデシュ、ダッカ
・実施期間:2015年12月~2016年5月
・直接及び間接受益者数:1,600人
・費用:1,093.78 USD (JWFファンド1,000ドル、自己資金93.78ドル)

*1:Water, Sanitation, and Hygiene

実施地の課題
対象スラム地域の上下水道の普及率はわずか40%であり、ほとんどの人が安全な水と衛生にアクセスできていない。住民たちの野外排泄などによって水源は汚染され、下痢症やコレラ、肺炎といった様々な水に関連する病気の原因となっている。

実施事項
1)10世帯に 雨水貯留タンクを各1基設置
2) 地域共有の雨水貯留タンクを2基設置
3) 地域共有のトイレを改修
4) WASHの改善のための野外ワークショップを10回開催

これらの活動により、対象スラム地域の住民が雨水と衛生設備を使用できるようになったため、水の購入費と水に関連する病気の削減が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 雨水貯留タンク
    世帯ごとの雨水貯留タンクは、各世帯の住民によって適切に維持管理されている。住民たちは、溜まった水を主に洗濯や食器洗いに使用しており、水の購入費が削減できていることに満足している。
    地域共有の雨水貯留タンクは、住民が設立した清掃委員会により、週交代制で適切に維持管理されている。130世帯543人以上がこのタンクを使用しており、溜まった水は洗濯や食器洗い、手洗い、水浴びに使用している。これにより、水の購入費を節約できている。
  • トイレ
    改修した地域共有のトイレは、住民によってきれいに利用されており、悪臭は発生していない。住民による清掃委員会によって維持管理されている。住民たちは壊れたトイレが改修され、使いやすくなったことに満足している
  • 啓発活動参加者の意識の変化
    WASH改善のための野外ワークショップに参加した住民の意識や行動に良い変化が見られた。彼らは雨水の利用について理解し、400人以上の小学児童は、ワークショップで学んだより良い衛生習慣を実践している

 

現場からの声

  • カビールさん(男性、雨水貯留タンクの所有者)
    私の家に設置された雨水貯留タンクには満足しています。水道サービス以外の水源を得ることができ、水の使用料が減っています。
  • チッタランジャンダスさん男性、55歳、スラム地域のリーダー)
    私はこの地域のリーダーを務めています。これまで、この地域では不衛生なトイレ等について、住民から不満の声がありました。JWFの支援により、トイレ2基の改修と雨水貯留タンクの設置がされ、衛生的な設備があることに地域住民は喜んでいます。今や不満の声はなく、みんなが幸せです。特に雨水貯留タンクについては、水不足の解決に最適です
  • アメナさん(女性、18歳、スラム地域の住民)
    台所と共用トイレがとても近く、料理をしている時に誰かがトイレを使っていると、カレーの臭いより嫌なにおいがしていました。今はトイレが改修されたので、問題がなくなりました。今ではすぐトイレを使え、清掃も簡単です。以前より生活環境が良くなりました
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JWFファンド2015で設置した地域共有の雨水貯留タンク

JWFファンド2015で改修したトイレ

 

2. 小学校児童と住民の健康を守るための地域プロジェクト (ウガンダ)
(1) JWFファンド2015 プロジェクト概要
・実施団体:Roco Paco Community Based Organization (#008)
・活動名:小学校児童と住民の健康を守るための地域プロジェクト
・実施地:ウガンダ、北部地域、Alliance小学校
・実施期間:2015年12月~2016年5月
・受益者数:直接受益者数500人(小学校児童270人、児童の両親130人、中等学校教員20人、中等学校への訪問者80人)、間接受益者数176人(女性102人、男性74人)
・費用:1,180 USD (JWFファンド1,000ドル、村のリーダーたちより180 ドル)

実施地の課題
ウガンダの農村部における上水設備の普及率は30%ほどで、住民たちは安全な水を得るために3キロ以上離れた場所へ水を汲みに行かなければならない。また、農村部では林での野外排泄が習慣となっており、コレラや腸チフス、マラリアにかかる人が多い。

実施事項
1) トイレを1基建設
2) 既存のトイレを1基改修
3) 衛生に関するワークショップを開催

これらの活動により、Alliance小学校に通う児童や児童の保護者、教師、学校への訪問者などが改善したトイレを使用できるようになり、学習環境の改善が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • トイレ
    建設・改修したトイレはそれぞれ適切に使用されており、児童とその保護者が週交代制の定期的なトイレの清掃を継続して行っている。肥溜めに溜まった糞尿の分解を促進するため、灰と化学肥料を用いている。
  • その他
    地方行政が学校の衛生検査を行う、また、地方行政や地域住民によるグループが住民を対象とした衛生に関する啓発活動を行うなど、地域での連携が続いている。


現場からの声

  • ララム・アグネスさん(女性、32歳、Alliance小学校の教頭)
    トイレを使えるようになって、とても快適です。以前は一度に2人しかトイレを使えませんでしたが、プロジェクトのおかげで13人が使えるようになりました。学校の衛生環境が改善され、児童の出席率が増えました。学校が休みの期間のトイレ掃除について、地域住民と対立することもありましたが、今はその期間は地域住民がトイレ掃除を担当することになっています。
  • アウマ・クラレさん(女性、Alliance小学校の児童)
    トイレが使えるようになって、とても助かっています。学校の近くに住む人びとの中には無料でトイレを使うことを希望する人もいましたが、村長が解決してくれました。
  • オキディ・ジェームスさん(男性、52歳、Alliance小学校に通う児童の保護者)
    このプロジェクトのおかげで、家族の生活環境がより良くなりました。ワークショップで水と衛生、健康について学んだ後、私は自宅にごみ捨て場とトイレ、水浴び場を作りました。それまで、私の子どもは1学期に7回病気にかかっていましたが、今は3回に減りました。Roco Paco CBOが開催したワークショップのおかげで正しい情報と知識を得られ、村の人びとは材料の収集や衛生管理に積極的になりました。おかげでみんなが幸せで健康な村になりました。
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建設したトイレ、
教師(左)とRoCo Pacoスタッフ(右端)

Alliance小学校児童へのグループインタビュー

 

3. バイオサンドフィルターの導入とトレーニングによる、イサンドゥラ地域の慢性的な水と衛生の問題解決(タンザニア)
(1) JWFファンド2015 プロジェクト概要
実施団体Right Livelihood and Empowerment Organization (RLEO) (#034)
・活動名:バイオサンドフィルターの導入とトレーニングによる、イサンドゥラ地域の慢性的な水と衛生の問題解決
実施地タンザニア、ムワンザ州
・実施期間:2015年12月~2016年5月
・受益者数:直接受益者 女性120人、男性72人、イサンドゥラ小学校児童205人
・費用:1,424 USD (JWFファンド1,000ドル、村長や開発委員会から424ドル)

実施地の課題
イサンドゥラ村、イルング村、イヒンビリ村の住民たちは慢性的な安全な飲み水の不足の課題に悩まされている。特に乾季の間、住民たちは汚れた池の水を使用している。安全な飲み水を得るために、女性や女児たちは約6キロ離れた井戸に水を汲みに行かなければならない。これにより、女性や女児たちが性的暴行を受ける危険が増え、また、女児は学校に通う機会を奪われている。

実施事項
1) バイオサンドフィルタータンク1基をイサンドゥラ村に導入
2)石鹸作りのトレーニングを実施
3)衛生と健康に関する啓発活動を2回実施
4)生理用品を村の女児に配布
5)維持管理チームと村の環境委員会を設立
6)水質検査を実施

これらの活動により、住民が安全できれいな水を使用できるようになったため、特に女性や女児たちがより良い暮らしを送ることができると期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • バイオサンドフィルタータンク
    バイオサンドフィルタータンクは、住民によって適切に利用され、維持管理されている。維持管理について住民同士の対立や維持管理方法の誤解などは見られなかった。これは、維持管理方法に関するワークショップを実施したことと村の環境委員会が積極的に維持管理を手伝っていることが要因であると考えられる。
  • 石鹸作りのトレーニング
    住民たちは村に自生する木の葉っぱを用いて簡単に石鹸を作ることができると知り、喜んでいる。2017年3月には、原料となる木を村に更に植えることが決定された。
  • 衛生と健康に関する啓発活動啓発活動により、児童たちは野外排泄の危険性や水に関連する病気について理解を深めた。児童たちは野外排泄をしなくなり、トイレの後や食事の前にせっけんで手を洗うなどのより良い衛生習慣と行動を実施している
  • 維持管理チームと村の環境委員会
    どちらも活動を続けているが、維持管理チームは資金不足により、いくつかの活動を実施できていない。

 

現場からの声

  • エングワナ・サングワィさん(女性、44歳、村の住民)
    バイオサンドフィルタータンクはとても良く機能しています。プロジェクトが実施される前、私たち女性は夜中に起きて家族の為に遠くまで安全できれいな水を汲みに行かなければいけませんでしたが、今はその必要がなくなりました
  • エンジレ・クイさん(女性、13歳、村の住民)
    バイオサンドフィルターができて、とても助かっています。以前のように授業を欠席することもなくなり、今は問題なく学校に毎日通えています。将来的に、この装置が増えたらいいなと思います。そうすれば、水をろ過しに集まった人々の待ち時間が減るからです。
  • ビブンザ・エンシャビさん(男性、50歳、村の住民)
    私の家族はバイオサンドフィルターを利用していて、妻はバケツに5リットルの水を汲んで家に戻ってくることもあります。
    このプロジェクトのおかげで、妻や娘の生活が変わりました。以前は、家族の為にきれいな水を見つけることに苦労していました。いま、この村の一番の問題は日中の暑い時間帯に安全な水を得ることです。
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JWFファンド2015で設置したバイオサンドフィルタータンクから水を汲む女性と女児

 

4. 洪水を経験したニサッタ村にきれいな水を届けるプロジェクト(パキスタン)
(1) JWFファンド2015 プロジェクト概要
実施団体Shama Social Village Development Organization (#035)
・活動名:洪水を経験したニサッタ村にきれいな水を届けるプロジェクト
実施地パキスタン、チャルサダ郡
・実施期間: 2015年12月~2016年5月
・受益者数:直接受益者270 人、間接受益者550人
・費用:4,647USD (JWFファンド1,000ドル、Shama Organizationと現地コミュニティより3,647ドル)

実施地の課題
対象地域は、川と運河、その支流に囲まれ、水関連の自然災害に脆弱である。2010年の洪水では深刻な被害を受け、井戸などの飲み水の水源が失われた。貧しい住民のほとんどは、いまだきれいな水源のない生活を強いられている。

実施事項
1) ハンドポンプ10基を設置
2) 各ハンドポンプに排水管を設置
3) 洗濯場10個を設置
4) 公衆衛生プログラムを2回実施
5)維持管理委員会を設立

これらの活動により、対象地域に住む住民が安全な飲み水を確保できるようになったため、汚染された水に起因する病気の減少が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • ハンドポンプ
    10基のハンドポンプは、住民により適切に使用されており、維持管理委員会が管理している。2015年のプロジェクト実施後、地域の住民たちが自力で同じ構造のハンドポンプを5基設置した。地域の医師によると、汚染された水に起因する病気の発生率が以前に比べて6割に減った
  • 洗濯場
    10個の洗濯場は、適切に利用されており、排水管にも破損等はなかった。
  • 維持管理委員会
    村の住民による維持管理委員会は、月に一回、利用者から維持管理費を徴収し、帳簿に記録を取って適切に管理している

 

現場からの声

  • グルシャン・ベベさん(女性、47歳、ニサッタ村の住民)
    このハンドポンプができる前は、開口式の井戸からロープを使って水汲みをしていました。また、病気の原因が汚染された水であると知らなかったので、毎年、治療費としてたくさんのお金を病院に支払っていました。でも今は、子どもでも簡単に家の近くのハンドポンプからきれいな軟水を汲むことができます。きれいな水を利用できるようになり、私たちは健康面の安全と生活に良い影響が出ていると感じています
  • アェシャ・グルさん(女性、17歳、ニサッタ村の住民)
    家の近くから安全できれいな水を汲むことができてとても便利です。私や私の家族は、飲用や洗濯用、家畜用としてハンドポンプの水を使っています。ハンドポンプができてから、家の近くから安全な水が汲めること、汚染された水による病気が減ったこと、きれいで安全な水に関する衛生教育と啓発がこの地域で過剰になったことなど、良い変化がありました。
  • サディグ・アクバールさん(男性、37歳、ニサッタ村の医者)
    ハンドポンプが設置されてきれいな水を使えるようになってから、女性や女児が水に起因する病気にかかる率は少なくなりました。私の診療所に来る患者の8割が女性や女児でしたが、いまは2割に減りました
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JWFファンド2015で設置したハンドポンプから水を汲む村の住民と子どもたち

日本水フォーラムの会員の皆様、並びにCharity for Waterご寄付頂いた皆様のご支援とご協力に感謝いたします。
引き続き、ご支援・ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

(報告者:アシスタント・マネージャー 郡司晃江)

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