SDG6に関するワークショップの様子 | APWFの紹介ポスター発表 |
日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(APWF)は、UNESCAPが4月3~5日にタイ・バンコクの国連会議センターで主催した「持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム(APFSD)2016」内のワークショップ、及びAPFSD2016に参加すると共に、APWFの活動を紹介したポスター発表を行いました。
水の安全保障は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の中の目標6(SDG6)に加え、他のほとんどすべての開発目標に関係しています。国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)は、SDG6の適切、かつ的確な実施がSDGs全体の達成につながることを国際社会に発信していくことを目的として、主催したAPFSD2016内において、ワークショップを開催しました。
SDG6に関するワークショップでは、APWFの執行委員会議長であるRavi Narayanan氏をはじめ、SDG6.1~6.5に関する取り組みを実施している各機関の代表者がそれぞれの取り組みを通じて得た好事例や主要課題、教訓を共有し、アジア太平洋地域におけるSDG6、及び他の関連する目標の達成に向け、アジア太平洋地域全体で取り組む優先課題、及び、UNESCAPの役割について提言しました。本ワークショップは、UNESCAPのHongjoo Hahm事務局次長がモデレーターを務め、次の7名がパネルディスカッションを行い、会合参加者と質疑応答を交わしました。
スリランカ政府Vasantha Senanayake灌漑・水資源大臣は、スリランカにおける灌漑、及び、工場から出る廃水による農業と人々の健康への影響の観点から、水資源管理、及び水資源の合理的配分に関する課題を共有しました。
Integrated Water Management Institute (IWMI)のSonali Senaratna Sellamuttu氏は、ラオス、ネパール、インドにおけるコミュニティレベルの水資源管理に関する事例研究結果の紹介を通じて、水使用に関する多様な需要に対応するためには、技術的な解決のみならず、その国、及び、関連するコミュニティの社会・文化的な観点も包括したバランスの取れた政策、対策を計画・実施すべきだと強調しました。また、家庭部門だけではなく、他のセクター部門における水使用、及び、水資源開発においても女性の視点を取り入れた政策を計画・実施していく必要があると主張しました。
タジキスタン政府のSulton Rahimzodaエネルギー・水資源副大臣は、アラル海流域国の持続可能な水資源管理について言及しました。アラル海流域国では、依然として、水利協定に関するコンセンサスを得ていくことが難しいが、例えば、水力発電を通じて、流域国全体の環境的に持続可能な経済成長を検討していくことはその推進力になると述べました。その実現のためには、政治的意思、及びお互いの信頼関係の醸成が大変重要であること、既存の水利協定を今日の状況に合ったものに改定していくことが必要だと強調しました。最後に、Rahimzoda氏は、UNESCAPをはじめとする国連機関がアラル海流域のファシリテーター役を担うことを期待しました。
アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)議長のAbdullah Bin Keizrul氏も、河川流域の統合水資源管理を促進していく上で重要なことの一つに政治的意思を挙げ、さらに、利害関係者間の強固なコミットメント、利害関係者間の調整メカニズム、及び、明確なビジョンの伴った流域管理計画が必要であると強調しました。
インド・タミルナドゥ州計画員会のSantha Sheela氏は、実務経験を通じて、適切な衛生へのアクセスが限られた農村コミュニティにおいて、エコサニテーショントイレを導入し、普及していくことの利点を共有しました。
世界トイレ機関創設者のJack Sim氏は、衛生目標を達成していくために、アジア太平洋地域の貧困地区においてトイレを普及していくことは重要であるものの、人々の行動様式を改善していくことは容易ではないことについて触れ、野外排泄をなくし、衛生環境を改善していくためには、包括的な側面から需要を把握し、技術や資金を動員していくことが必要であると主張しました。
APWF執行委員会議長のRavi Narayanan 氏は、水と衛生に関するSDG目標を達成していく上で多様な課題を抱えるアジア太平洋地域において、各機関が実施している取り組みをどうやってタペストリーのように統括していくかという観点から、国際・地域間機関の役割について共有しました。
第1に、アジア太平洋地域では、水と衛生に関する課題が山積することから、問題解決に向けたネットワークが多数存在するが、各ネットワークがより明確なテーマやアプローチを選択していくことが必要だと強調しました。第2に、各機関が開催した会合を単発で終わらせるのではなく、各主要会合が互いにリンクし、それらの会合を通じて取りまとめた政策メッセージが継続的に発信されていく仕組みを作っていくことが重要だと述べました。最後に、UNESCAPのような国際機関は、地域内のメンバー国の代表を招集し、ネットワークを形成していくためのプラットフォームを提供し、包括的な取り組みを促す役割を担っていることについて触れ、重要なことは、各主体との信頼関係を構築していくことだと強調しました。信頼関係を構築していくことが、例えば、水・衛生問題を改善していく上で必要となってくる関連データの提供、利用度やアクセス、理解の向上、有意義な議論の活性化、問題解決、目標の達成という一連のプロセスの進展につながると力説しました。
上記SDG6に関するワークショップの成果文書はAPFSD2016全体の成果文書に統合され、2016年7月にニューヨークで開かれる持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムで報告されることになっています。
日本水フォーラムが事務局を務めるAPWFでは、UNESCAPが主催した本ワークショップの結果を含む、APWF関係機関による水の安全保障の改善に向けた取り組み、及び、第7回世界水フォーラム アジア太平洋地域準備プロセス等、APWFが取りまとめた会合、出版物を通じて発信した政策メッセージが、各国の政策・方策に適切に反映、実装されていくよう、政策決定者等に対して、引き続き知見の共有を行っていく次第です。