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【JWF News Vol. 182】人と水、共同体の誕生
2019年12月18日発行
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◇目 次◇
・巻頭言 人と水、共同体の誕生
・日本水フォーラムからの報告
– 「第5回水分野のファイナンスに関するラウンドテーブル」の参加
– INCHEM TOKYO 2019水イノベーション特別セミナー「SDGsをビジネスチャンスに~水分野の可能性」を開催しました
・採用情報
-アシスタント・マネージャー募集
・活動へのご支援・ご協力のお願い
・掲示板コーナー
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・巻頭言 人と水、共同体の誕生
代表理事 竹村公太郎
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2019年10月12日、巨大台風19号が関東から東北南部を襲いました。50河川以上で70カ所以上が決壊し、首都圏、東北では未曽有の災害となりました。
洪水で被災を受けるたびに、日本の国土とその形成過程が思い出されます。
今を生きる私たちに、歴史は未来を語りかけてきます。
流域開発に向かった江戸の250年
1600年、関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は征夷大将軍となり、1603年に江戸に幕府を開きました。徳川家康は200以上の戦国大名たちを統制するのに巧妙な手法を用いたのです。それは日本列島の地形の利用でした。
日本列島の地形は海峡と山々で分断されていて、脊梁山脈からは無数の川が流れ下っています。この日本列島の地形の単位は流域です。家康は、この各地の流域の中に大名たちを封じたのでした。
戦国時代は流域の尾根を越えた領土の奪い合いでした。しかし、江戸時代は尾根を越えて膨張することは許されなかったのです。(図―1)は流域単位で分割した日本列島の図です。
(図―1) |
全国の河川は、戦国時代までは制御されずに自由に暴れていました。特に、河川の下流部では、川はヤマタノオロチのように何条にも枝分かれして、乱流しながら沖積平野を形成していたのです。
その沖積平野では真水と海水がぶつかり合い、不毛の湿地帯を形成していました。
流域に封じられた大名と人々は、外へ膨張するエネルギーを、内なる流域に向けていきました。人々は力を合わせて湿地帯に堤防を築いていったのです。
そして、自由に暴れまくる何条もの川を、その堤防の中に押し込めてきました。
江戸時代の国土誕生
何条もの川を堤防に押し込めた目的は、はっきりしています。不毛な湿地帯を豊かな農耕地にすることでした。
(図―2)は、徳島県の一級河川、那賀川の平面図です。中央の2本の太い線が堤防で、現在の那賀川の堤防です。その周辺に見える幾条もの線は、かつて川が乱流していた旧河道です。今では地下に隠れて目で見ることはできませんが、間違いなく旧河道のヤマタノオロチは足元に住んでいるのです。
(図―2) |
これは那賀川だけではありません。江戸時代、全国の沖積平野でこのように堤防が築かれ、何条にも暴れる河川を、堤防の中に押し込んでいく作業が行われていったのです。
この江戸時代の流域開発によって、日本の耕地は一気に増加しました。各地の米の生産高は上昇し、それに伴って日本人口は1千万人から3千万人に急増加していきました。そのことを(図―3)が表わしています。
(図―3)を見ると、平安から鎌倉、室町そして戦国時代にかけて、日本の耕地面積は横ばいで、増加していません。ところが、江戸になると一気に耕地面積が増加しているのです。流域に封じられた人々が、堤防を築造し、耕地を増加させたのでした。
(図―3) |
平和な時代の流域の戦いは強固な共同体へ
日本の堤防の99.9%はこの江戸時代に築造されました。日本国土はこの平和な250年間の江戸時代に形成され、富の蓄積が可能となったのです。
流域開発によって新しい土地を得ましたが、この土地の下に潜んだ旧河道のヤマタノオロチは危険極まりなかったのです。洪水で水位が上昇すると、堤防のどこからか水が噴き出してきました。水が噴き出せば堤防の土は流出し、一気に堤防は破堤していきます。
人々の富を守るための戦いが始まりました。洪水から自分たちの田畑や住居を守る戦いです。足元に眠るヤマタノオロチとの戦いでした。
平和な江戸時代、洪水との戦いは日本人の宿命となりました。その戦いのために為政者たちは、堤防に巧妙な仕掛けを行ったのです。
堤防を守る仕掛け
地域の守り神の神社を、堤防の傍に祀ったのです。折々に人々は堤防の上の神社に向かいました。彼らは堤防を歩き、堤防を踏み締め、固めたのです。長良川の治水神社、多摩川左岸の穴守神社、酒匂川の福沢神社など、全国各地の河川に神社が祀られました。
神社だけではありません。堤防で様々なお祭りが催されました。新潟や埼玉の大凧揚げや九州の筑後川の祭りは、堤防を走り、歩く祭りです。(写真-1)は、堤防の上の凧揚げ大会です。
(写真-1) |
正月の初詣、春の花見、夏の花火、秋の祭りで、人々はぞろぞろと堤防を歩きました。人々は自分たちを守る堤を踏み固めながら、お祭りを楽しんだのです。堤防で初恋をし、結婚をして、子供と手をつないで堤防を歩きました。お祭りが人々のメモリーとなり、共同体のアイデンティティーが醸成されていったのです。
共同体意識は、敵の存在によって生まれます。
平和な江戸時代、日本人の敵は洪水だったのです。
日本人は堤防を守るために戦い、堤防の上のお祭りを通して、地域共同体のアイデンティティーを醸成していったのです。
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・日本水フォーラムからの報告
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– 「第5回水分野のファイナンスに関するラウンドテーブル」の参加
2019年11月26-27日にフィリピン・マニラにあるアジア開発銀行本部で開催された「水分野のファイナンスに関するラウンドテーブル」に参加しました。
「水分野のファイナンスに関するラウンドテーブル」は、経済開発協力機構(OECD)、オランダ政府、世界水会議(WWC)、世界銀行の共同イニシアティブで始まった世界規模の官民プラットフォームで、持続可能な開発目標を達成し、水の安全保障を高めていくために必要となる水インフラ整備に対する資金確保や投資の機会について、水分野及びファイナンス分野の主要な利害関係者が率直な対話や意見交換などを行います。2017年4月に第1回会合が開催されて以来、これまで4回のラウンドテーブルが開催されています。
▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/policy_recommendations/apws/2019/1218/?p=12678
(報告者:マネージャー 朝山由美子)
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– INCHEM TOKYO 2019水イノベーション特別セミナー「SDGsをビジネスチャンスに~水分野の可能性」を開催しました
2019年11月20日(水)~22日(金)に、公益社団法人化学工学会と一般社団法人日本能率協会が主催する「INCHEM TOKYO 2019」が、幕張メッセで開催されました。
日本水フォーラムは、11月20日(水)に特別講演会として、水イノベーション特別セミナー「SDGsをビジネスチャンスに~水分野の可能性」を開催しました。
本セミナーでは、民間企業の皆様を対象とし、SDGsの達成に貢献しうる海外でのビジネスを支援するJICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の仕組みや、実際に実施している海外で水分野のSDGに貢献できる事業などについてご紹介しました。
▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/transmitting_japanese/2019/1217/?p=12609
(報告者:マネージャー 上村奈津子)
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・活動へのご支援・ご協力のお願い
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日本水フォーラムは、皆様の会費及び寄付等によって国内外の水問題解決に向けた活動を行っております。
日本水フォーラムの活動を支援していただける会員を募集しております。
水問題解決に向けた持続可能な取組みを行うために、皆様の温かいご支援をなにとぞよろしくお願いいたします。
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日本水フォーラムは、国内外の水問題解決に向けて分野問わず幅広い方々と協働で活動を展開しています。
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・採用情報
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-アシスタント・マネージャー募集
現在日本水フォーラムでは、アシスタント・マネージャーを募集しております。
日本水フォーラムのミッションとビジョンを理解し、地球上の水問題解決に貢献したいという、強い意志をお持ちの方のご応募をお待ちしています。
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