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【JWF News Vol. 190】 2020年8月19日発行
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◇目 次◇
・巻頭言 【特別寄稿】パラダイムシフト:「自然との共生」を補完するハード対策へ
・日本水フォーラムからのお知らせ
– ストックホルム世界水週間アットホーム JWF主催「NoWNET」セッションを開催!
・日本水フォーラムからの報告
– JWFファンド2020 速報
– JWFファンド2019 プロジェクト完了報告(ウガンダ)
– 「水よ届け」打ち水大作戦&「水の日」(8月1日)の取り組み
– 水未来ジャーナル電子版
・活動へのご支援・ご協力のお願い
・掲示板コーナー
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・巻頭言 【特別寄稿】パラダイムシフト:「自然との共生」を補完するハード対策へ
日本水フォーラム評議員 太田猛彦(東京大学名誉教授)
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荒廃から再生した日本の山林
水資源に恵まれていると言われる日本ではあるが、豪雨は浸水害と土砂災害をセットでもたらすことが多い。現シニア世代がその対策に従事してきた昭和時代後期以降、国土保全を考えるバックグラウンドは二度大きく変化したように思われる。
一つは昭和時代後期から平成時代初期にかけて、過去数百年にわたって劣化していた日本の森林が成長し、豊かなみどりがよみがえったという変化である。すなわち、昭和時代中期の山地では表面侵食や表層崩壊が多発して土砂災害を引き起こし、大量の土砂が河川や海岸に流出していた。その河川では、河川改修が十分でなかったこともあって、各地の大河川でたびたび氾濫災害が発生していた。その後、精力的な河川改修や大ダムの建設、森林の回復等によって平成時代に入ると大河川での水害は少なくなり、表面侵食は消滅し、表層崩壊も減少した。このことは森林の過剰利用によって引き起こされた水害や土砂災害をほぼ克服したことを意味し、熊沢蕃山以来の「治山治水」はほぼ成就したものと評価している。今後の治山治水は東アジアのモンスーン帯にあり、プレートの沈み込み帯に位置する日本列島に生きるという宿命によって甘んじて受け入れざるを得ない土砂災害・水災害を減災する治山治水であろう。
この間の平成時代に「ダムか、緑のダムか」の論争があったが、今ではダムの功罪や森林の機能の特徴とその限界が整理されており、両者の長所を生かし、欠点を補いあう国土管理が望まれる。
地球規模課題の時代を迎えて
二つ目の変化は平成時代の末期に顕在化してきた地球温暖化によるとみられる豪雨の大規模化という変化である。平成時代の水災害は東日本大震災での津波災害が特筆されるが、末期には毎年各地で過去の観測規模をはるかに上回る豪雨が観測されて大河川での洪水氾濫が頻発するようになった。ふり返ってみれば昭和時代以来の河川改修の効果が表れた40年程度の平穏期が破られたことを意味し、明らかに気候が変化した結果と思われる。気候が変化しなければ、それぞれの地域の気候に対応した河川地形の下で、豪雨の超過確率に対応した洪水の規模が想定されるが、気候が変化すればその限りでない。
注目すべきは、洪水被害だけではなく土砂災害も大きく変化していることである。かつては複数の表層崩壊が集合して土石流が発生する形態が多かった。現在は単独の崩壊が土石流化している例が多い。表層崩壊は減少したが、森林に覆われた山腹からも大量の流出水が加わるので土砂の攪乱が激しく、土石流化する。崩壊が目立たない渓流でも流出水によって渓岸や渓床が激しく侵食されている。今後も発生が予想される流木災害や深層崩壊も含めて、令和の時代は新たな対応が求められているように思う。
「自然との共生」から発想を
令和2年7月豪雨による球磨川の氾濫は従来の想定をはるかに超えるものだった。川辺川「緑のダム」論争に多少かかわったものとして、同ダムが完成していたと仮定して今回の水害がどの程度減災されたかを評価することには興味があるが、温暖化による気候変化の下ではもっと根本的な発想の転換が必要だろう。例えば、これまでの「人間に都合が良い土地利用・都市づくり→そのためのハード対策(ダム・堤防)→それを補うソフト対策(警戒・避難)→自然の保全にも配慮する」という考え方から「自然と共生し、防災を考えた土地利用・都市づくり→(生態系を用いた防災eco-DRRの利用)→ソフト対策→最後にそれらを補完するハード対策」というような考え方で、都市づくりと合わせてハード対策を計画する方向に転換する必要があるのではなかろうか。
熊本県、川辺川(右)と球磨川の合流地点
(撮影:2020 年 7 月 8 日 国際航業株式会社)
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・日本水フォーラムからのお知らせ
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– ストックホルム世界水週間アットホーム JWF主催「NoWNET」セッションを開催!
日本水フォーラム(JWF)は、ストックホルム世界水週間アットホーム(World Water Week at Home)の会期中(8月24~28日)である8月27日(木)日本時間17時~17時45分(ストックホルム時間10時~10時45分)に、NoWNETメンバーと、ウェビナー「気候変動下の洪水管理に対処していくための自然を基盤とした解決策」を開催します!
▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/transmitting_japanese/nownet/2020/0819/?p=14767
(報告者:マネージャー 朝山由美子)
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・日本水フォーラムからの報告
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– JWFファンド2020速報
JWFファンドは、日本水フォーラムの会費や、一般の方から寄せられた寄付により運営されています。
本年は1カ月の募集期間に、水供給や水と衛生、水災害関連の活動について、35カ国から347件の応募が寄せられました。現在、採用案件決定に向けた審査を実施しております。
情報は随時ウェブページで公開いたしますので、今後とも現場の課題と活動にご関心をお寄せいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
▼JWFファンドについてはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/what_we_do/grass_roots_projects/jwf
(報告者:ディレクター 浅井重範、副マネージャー 郡司晃江)
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– JWFファンド2019 プロジェクト完了報告(ウガンダ)
JWFファンド2019には、36カ国から302件の応募があり、選考の結果、6カ国7件の活動を支援しました。
今回は、ウガンダで実施された湧水保護設備の修繕による小学校の水・衛生環境改善プロジェクトについて、ご報告いたします。
▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/grass_roots_projects/jwf/2020/0818/?p=14698
(報告者:ディレクター 浅井重範、アシスタント・マネージャー 田畑美代)
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– 「水よ届け」打ち水大作戦&「水の日」(8月1日)の取り組み
あらゆる生命の源である水。新型コロナウイルスに立ち向かう、新たな日常の中でも、衛生を確保するために、清浄な水が不可欠です。
日本では「水を手に入れる」ということを意識することは滅多にありませんが、世界は大変厳しい状況にあります。そうした世界の水事情をわかりやすく紹介したコンテンツを掲載しております。ぜひご参照ください。
▼“数字”で見る「世界の水事情」はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/resources/wash/
8月1日には、自宅から参加いただく、いっせい打ち水大作戦を開催しました。詳しくは、打ち水大作戦ウェブサイトをご覧ください。
▼打ち水大作戦ウェブサイトはこちら▼
http://uchimizu.jp
また、日本水フォーラムは、地球規模の水循環を通じて、水を必要としている世界の人たちに、「水よ届け」と願いを込めて、打ち水することを呼びかけています。処暑8月23日までは打ち水強化月間です。打ち水した際には、その様子をぜひSNSでシェアしてください(#打ち水大作戦)。
▼「水よ届け」打ち水大作戦はこちら▼
http://uchimizu.jp/water/
(報告者:ディレクター 浅井重範)
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– 水未来ジャーナル電子版
「水未来ジャーナル」は、2017(平成29)年3月に創刊された、日本水フォーラム初の機関誌です。
日本水フォーラムが年に一度開催するシンポジウム「水未来会議」と連動し、これまでに4巻発行されました。
「水未来ジャーナル」バックナンバーを、電子版で公開しましたので、「水未来会議」の開催履歴と併せ、是非ご覧ください。
▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/policy_recommendations/future/2020/0817/?p=13993
(報告者:マネージャー 桑原清子)
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・活動へのご支援・ご協力のお願い
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大胆な発想と行動力で地球上の水問題解決を目指す日本水フォーラムを応援してください。
日本水フォーラムは、認定NPO法人です。日本水フォーラムへの「ご寄付」と「賛助会員の会費」は、税制優遇の対象となります。
▼税制優遇の内容はこちら▼
https://www.waterforum.jp/all/info/2020/0520/?p=13453?tag=jp,rep_jp
▼ご寄付・遺贈に関するご案内▼
https://www.waterforum.jp/jp/get_involved/make_a_donation
▼会員募集に関するご案内▼
https://www.waterforum.jp/jp/get_involved/become_a_member
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「第4回アジア・太平洋水サミット(4th APWS)」は一年程度の延期となりましたが、開催に向けた準備は着実に進めて参ります。
新たな日程で4th APWSを円滑に開催できるよう、引き続きご寄付・ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
▼寄付の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/get_involved/make_a_donation#1
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・掲示板コーナー
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【JICE『第34回 技術研究発表会』】
主催:一般財団法人国土技術研究センター (JICE)
配信期間:令和2年7月10日~(8/31までは無料でCPDも取得可能)
視聴方法:JICEのHPでオンデマンド配信
URL:http://www.jice.or.jp/reports/recital/34th
【2021日本ストックホルム青少年水大賞】
主催:日本水大賞委員会・国土交通省(事務局:公益社団法人日本河川協会)
募集期間:令和2年4月1日~10月31日
表彰式:令和3年6月下旬~7月上旬 日本科学未来館 予定
URL:http://www.japanriver.or.jp/sjwp/index.htm
【第23回日本水大賞】
主催:日本水大賞委員会・国土交通省(事務局:公益社団法人日本河川協会)
募集期間:令和2年7月7日~10月31日
表彰式:令和3年6月下旬~7月上旬 日本科学未来館 予定
URL:http://www.japanriver.or.jp/taisyo/
※免責事項:日本水フォーラムは、掲示板の掲載情報に関して責任を負いかねます。
掲載情報へのお問い合わせは各主催者へお願いいたします。
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▼過去のJWF Newsはこちら▼
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※掲示板への掲載希望、新規配信希望、配信停止・変更などは、下記アドレスまで
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JWF News Vol. 190 令和2年8月19日発行
特定非営利活動法人日本水フォーラム(認定NPO)
〒103-0015 東京都中央区日本橋箱崎町5-4 アライズ第2ビル6階
TEL: 03-5645-8040 FAX: 03-5645-8041
E-mail: news[at]waterforum.jp URL: https://www.waterforum.jp
※[at]をアットマークに変えて送信してください。
現在、新型コロナウイルス感染拡大の防止対策として、職員一同在宅勤務・テレワークを実施しています。
そのため、ご意見等に対するご返信に数日を要する場合もございますので、予めご了承頂きたくお願い致します。
皆様の安全とご健康を祈念申し上げます。
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このコンテンツは、公益財団法人 河川財団の河川基金の助成を受けています。