JWF News 6月号

JWF News Vol.129 日本水フォーラムロゴ
平成27年6月3日発行

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—– 目 次 —–

巻頭言 水防と日本人のアイデンティティー

 

日本水フォーラムからのお知らせ
【6月24日】第7回世界水フォーラム報告会を開催します
契約職員・アルバイト職員を募集します

 

日本水フォーラムからの報告
ジュエリーブランド「4℃」との共同プロジェクト「アクア・プログラム2014」が完了しました
【5月16日】水防演習ツアー2015を開催しました
【5月16日】水防演習会場で展示ブースを出展しました

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巻頭言 水防と日本人のアイデンティティー
日本水フォーラム事務局長
竹村公太郎

 

利根川水系連合・総合水防演習
平成27年5月16日、群馬県伊勢市の利根川で水防演習が行われました。
日本水フォーラムは、国土交通省と共に、各国の在京大使館の方々をお招きしてこの水防演習の見学を実施しました。
ベナン共和国特命全権大使、シリア・アラブ共和国臨時代理大使を始め、18カ国25人の大使館・国際機関の方々が参加されました。
日本は世界でも最先端の近代社会を走っています。しかし、その21世紀の近代日本で、人々のボランティアによって、地域を守る水防活動が行われています。この水防活動はもう何百年間も続いています。
世界の外交官たちはそのことに驚き、感動しているようです。
私はこの水防演習に参加するたびに、日本人を強く意識してしまいます。

敵がいなかった日本
日本の歴史は、約1,500年前の飛鳥時代から文書で記録に残されています。この歴史の中で、日本は一度も他民族に侵略されませんでした。
何しろユーラシア大陸と日本列島の間には、対馬海流が勢いよく流れています。そして、日本列島には先が読める安定した貿易風は吹いていません。1年中、不安定な低気圧の通り道になっています。
この対馬海峡の地形と、不安定な低気圧の通り道の気象が、日本を守り続けました。日本文明は、世界史の中で一度も侵略されなかった不思議な文明です。
国際政治学者の故・サミュエル・ハンティントンは日本文明を指して「日本文明には敵対する文明はなかった。しかし、連携する文明もなかった」としています。日本文明は孤立した文明だったのです。
日本には敵がいませんでした。敵のいない日本には、共同体意識は育たなかったのでしょうか?

共同体意識
共同体意識は、敵の存在によって形成されます。敵がいる共同体には強い共同体意識が育ち、敵のいない共同体には緩い共同体意識しか育ちません。
21世紀の日本には敵がいませんから、普段は日本人など意識しません。しかし、ワールドカップやオリンピックが始まると、急に日本人意識が強まってきます。スポーツでは、敵の存在が露わになってくるからです。
歴史的に日本には、敵がいないのです。ですから、日本人に共同体意識は育たなかったのでしょうか?
実は、日本人に敵はいたのです。それは日本列島の内に存在していたのです。
日本人の敵は「洪水」でした。

宿命の敵・洪水
日本列島の降水量は年間1,700mmと比較的多いのですが、季節変動と時間変動が大きい降雨です。さらに、日本列島の中央を脊梁山脈が走っています。そのため、降った雨は一気に海に向かって流れ下ります。
下流部の沖積平野は、肥沃ですが、洪水が襲ってくる危険な場所でもありました。日本人はこの沖積平野で稲作を開始したのです。
稲作のため人々は力を合わせて堰や水路を造り、川から水を引きました。
そして、襲ってくる洪水から自分たちを守るため、堤防を築きました。
洪水は毎年のよう襲ってきました。堤防の決壊によって多くの人命と財産が失われ、人々を苦しめました。
稲作を開始した人々にとって、洪水との戦いは、避けることができない宿命だったのです。堤防の築造と堤防の強化、そして、特に洪水時の水防活動は、共同体にとって最重要課題となっていきました。
この洪水と戦うことで、共同体意識が醸成されていきました。

共同体とアイデンティティー
稲作の歴史は、洪水との戦いの連続でした。洪水との戦いの物語が、村に伝説として残されました。洪水への勝利のため、神社は祈りの場となりました。村の祭りは、みんなが堤防を歩いて、堤防を踏み固める祭りになりました。
為政者たちも、人々が堤防を踏み固める工夫を凝らしました。堤防に桜を植え、春にはお花見で人々を堤防に集めました。夏には花火大会で人々を堤防に集めました。芝居小屋や料亭街を堤防の近くに許可をして、多くの人々が堤防を歩くようにしました。
稲作共同体の人々は、この川の歴史と文化の中で育ちました。それらは人々の故郷の思い出として心の中に定着しました。そのメモリーが、その共同体に属している意識「アイデンティティー」として形成されていったのです。

都市化の中で
150年前の明治の近代化以降、日本は激しい都市化に見舞われました。その都市化の中で、稲作共同体は崩壊する危機を迎えました。
しかし、稲作共同体が衰退しても、洪水から地域を守るという地域共同体意識は変わりませんでした。
その証が、今も続いている地域の人々による水防活動なのです。
堤防の漏水を防ぎ、堤防の決壊から地域を守る水防は、今でも現実なのです。単なる行事ではないのです。

私は仕事上、数え切れないほど水防演習に参加しました。そして、この演習に参加するたびに、自分は日本人だ、と強く感じます。
それは、水防演習では洪水という「敵」を身近に意識してしまうからなのです。

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日本水フォーラムからのお知らせ
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【6月24日】第7回世界水フォーラム報告会を開催します
日本水フォーラムでは、来る6月24日(水)、年次の通常総会を開催します。本年はその後に、「第7回世界水フォーラムの報告会」を併催します(於:東京都中央区)。各方面の皆様の今回参画の成果等をふまえ、水課題への取組の今後を改めて考える契機として、当代担当者皆様によるトークセッション「私たちの目指すこと~世界水フォーラムをめぐって(仮題)」を予定しています。
» 参加お申込方法・概要等は、日本水フォーラムウェブサイトをご覧ください
» 第7回世界水フォーラム デイリー速報 一覧
» 日本水フォーラム Facebook

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契約職員・アルバイト職員を募集します
水は、あらゆる生命の源であり、人々の生活・社会や経済を支える貴重な資源です。 日本水フォーラムのミッションとビジョンを理解し、地球上の水問題解決に貢献したいという、強い意志をお持ちの方のご応募をお待ちしています。
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日本水フォーラムからの報告
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ジュエリーブランド「4℃」との共同プロジェクト「アクア・プログラム2014」が完了しました
スリランカの北部州パブニヤ県の地下水は、基準値を超えたフッ素やヒ素など、身体へ深刻な問題を与える不純物が含まれ、飲用に適さないことに加え、昨年は記録的な干ばつに襲われました。そのためアクア・プログラム2014では、村民に安全な水を届けるため、雨水貯留タンク14基の建設を行いました。
»詳細は日本水フォーラム・ウェブサイトをご覧ください。

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【5月16日】水防演習ツアー2015を開催しました
「第64回利根川水系連合・総合水防演習」に合わせ、5月16日(土)に「水防演習ツアー2015」を開催いたしました。当日は、ベナン共和国特命全権大使、シリア・アラブ共和国臨時代理大使をはじめ、18カ国・総勢25名の在京大使館及び国際機関関係者の方々にご参加いただきました。日本の伝統的な水防活動の視察・体験を通じ、理解を深めていただく機会とすることができました。日本水フォーラムでは、今後も日本で培われた水に関する多様な技術と経験を世界に発信していきます。
»詳細は日本水フォーラム・ウェブサイトをご覧ください。

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【5月16日】水防演習会場で展示ブースを出展しました
5月16日(土)、群馬県伊勢崎市の利根川流域において、「第64回利根川水系連合・総合水防演習」が開催され、あいにくの雨天にもかかわらず消防団や一般来場者を含め約1万人の参加者が集まりました。
日本水フォーラムは展示・出展エリアにおいて、“水クイズ”と題した展示を行い、訪れた方々に日本や世界の水に関する啓発活動を行いました。
»詳細は日本水フォーラム・ウェブサイトをご覧ください。

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JWF News Vol.129    平成27年6月3日発行

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