国連世界水開発報告書(The United Nations World Water Development (WWDR) 2021)は、3 月 22 日の「世界水の日」に合わせて、UN-WATER から公表される水と衛生問題に関する代表的な報告書です。毎年異なるテーマに焦点を当ており、本年は、「水の価値評価」に焦点を当てています。
水は、生命、社会、経済の基盤となるものですが、水の価値を評価しようとすると、評価方法は様々で、利用者の観点や視点によっても大きく異なり、水の「真」の価値を評価することは極めて困難です。
このため、政治的意思決定の中で水を軽視したり、誤った管理をしたりすることがあります。従来の経済的の側面から評価した水の価値は、水道料金や造水コストを用いて評価されていました。しかし、持続可能な開発目標を達成させ、公平な水資源管理を実現していくためには、意思決定プロセスにまで踏み込んで、水の価値を改めて測定・評価していくことが不可欠です。 可能な限り水の価値を正確に評価しようとするためには、これまでの共通した評価法をさらに深化させるだけでなく、異なる価値の考え方を比較、検証、統合していくアプローチが必要であり、ここで得られた公正で公平な結論は、政策や計画に反映させていくことが重要です。
そこで、WWDR2021 では、水源と環境、水インフラ、水・衛生・衛生環境(WASH)、社会経済活動、食料と農業、エネルギー・工業・ビジネス、文化、娯楽、宗教的な観点などのさまざまな分野や視点から、水の評価に関する現状と課題を調査し、水管理を改善し世界の持続可能な開発の達成に資する水の価値の評価方法を明らかにします。
また、サブ・サハラアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海、アジア・太平洋地域、アラブ地域における事例を紹介するとともに、水ガバナンス、ファイナンス、科学的知見と能力開発の分野に対する提言についても収録されています。
日本の熊本の地下水管理の事例が、アジア・太平洋地域の事例として紹介されています。
WWDR2021 の全文は、こちらからご覧いただけます(英語)
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000375724
(報告者:マネージャー 朝山由美子)