ストックホルム世界水週間2021オンラインの1日目に、アジア太平洋地域のファイナンスに焦点を当てたセッションを開催しました。とりわけ、アジア太平洋地域における気候変動に対するレジリエンスと水の安全保障確保に対する投資の拡大と主流化に向けた様々なイニシアティブを紹介しました。
Best practices in Innovative water financing in Asia and the Pacific
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セッション開催結果概要
本セッションは、プレゼンテーションとパネルディスカッションの2部構成で行われました。
プレゼンテーション
1.「アジアにおいて様々な革新的ファイナンス戦略の実施を可能にする条件」
OECD Resilience, Adaptation and Water, Environment Directorate チームリーダーの Xavier Leflaive氏は、アジア開発銀行が発行している最新の「アジア水開発展望2020(AWDO 2020)」や、OECDが発行している「2021年版アジア太平洋地域水関連ファイナンスレポート」では、アジア地域の水の安全保障を強化するための様々な資金調達手段をまとめていることを共有し、機会と課題、導入及びスケールアップに必要な条件を提示しました。
2. レジリエンス強化に向けた民間部門の参加
ADB民間部門業務局アドバイザー 木村寿香氏は、ADBのアプローチを紹介しました。水インフラの強靭性は、強靭な都市を形成していくうえで重要な要素で、コロナ後は、より良いファイナンスを構築ことが不可欠であることから、ADBは、関係機関のパフォーマンスを向上させる方法を支援することで、ファイナンス、知識、パートナーシップを通じた民間セクターの参加を支援していることを共有しました。また、ADBは、「気候変動に強く、スマートな水インフラ」、「湖沼・河川の再生」、「下水処理能力の拡大」、「水・衛生施設を改善するためのグリーンボンド」、「PPP取引アドバイザリー」などの新しいプロジェクトを実施していることを紹介しました。
3. 金融機関における水の強靭性の主流化
水の強靭性の規模拡大と主流化がアジア太平洋地域の水の安全保障を支える。金融機関は、この変化を推進するためのユニークな立場にある。Alliance for Global Water Adaptation (AGWA) Technical DirectorのKari Davis氏による発表では、金融機関における水の強靭性の主流化方法を共有しました。
4. Odishaのマイクロファイナンスの事例
気候変動に適応するためには、上流で大規模な資本投資を行う必要がある。その一方で、人々やコミュニティが当面のニーズを解決できるような資金の流れを作ることも必要である。Water.org Microlending Partnerships Senior Managerの Buvaneswari Duraisamy氏は、インドのあるコミュニティが、不確実な気候に直面しても安定した水供給を確保するために、どのようにコミュニティ間で協力しているか、Odishaのマイクロファイナンスの事例をビデオとともに詳しく紹介しました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、下記3つのセクターの代表者が、革新的ファイナンスの動員に対する現場の状況及び課題を共有し、スケールアップに向けて必要なことを議論しました。モデレーターを務めたRavi Narayanan APWF執行審議会議長は、各パネリストに対して次の質問を行い、パネリストと議論を交わしました。
- 影響力のある機関はどのようにして現場の貧困層とつながるべきか?
- あなたの組織が有している技術とパートナーシップモデルは、どのようにして、他の国の組織に対してアドバイスすることができるか?
- アジア太平洋地域において、革新的な資金政策やプログラムを推進するためには、組織の中間レベルや現場レベルで、どのような能力開発が必要になるか?
● サービスセクター: マニラウォーター Perry Rivera, Advisor, Manila Water
● 金融レジリエンスセクター: 緑の気候基金 Ania Grobicki, Deputy Director of External Affairs, GCF
● 銀行部門: 農業と農村開発へのインド国家銀行 G. R. Chintala, Chairman, India’s National Bank for Agriculture And Rural Development (NABARD), Mumbai
最後に、ADBの水セクターグループチーフのNeeta Pokhrel氏が閉会の挨拶を述べました。Pokhrel氏は、本セッションのスピーカーやパネリストは、単に資金調達の話をしたわけではなく、利用可能な資産や希少な水資源を最大限に活用すること、水セクター内と水セクター以外のガバナンスや能力を強化することが、資金調達のギャップを最小化するために大変重要だと強調しました。また、民間によるファイナンスやPPPの選択肢を増やすことは、イノベーションを取り入れつつ、技術的に健全なシステムを設計し、気候変動に対して強靭なインフラやシステムを構築するための資金調達の機会の増加につながることに言及しました。
アジアフォーカス・ファイナンスセッションからの行動提案
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プログラム
開会の辞
プレゼンテーション Private sector participation in resilience Mainstreaming water resilience in financial institutions in Asia Case study of Adhikar, a microfinance institution in Odisha, India (with video) パネルディスカッション Service sector: Perry Rivera, Advisor, Manila Water Resilience sector: Ania Grobicki, Deputy Director of External Affairs, GCF Banking sector: G. R. Chintala, Chairman, India’s National Bank For Agriculture And Rural Development (NABARD), Mumbai 聴講者を交えたオープンディスカッション 閉会の辞: Neeta Pokhrel, Chief of Water Sector Group, ADB |
(報告者:朝山由美子 マネージャー)