JWF News 10⽉号 生態学と河川工学のはざま(後編)

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【JWF News Vol. 204】2021年10月20⽇発⾏
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◇⽬次◇
・巻頭言 【特別寄稿】生態学と河川工学のはざま(後編)―応用生態工学誕生
・日本水フォーラムからのお知らせ
 - INCHEM TOKYO 2021 セミナー「『その先』の未来へ-水から始めるイノベーション」を開催します
・日本水フォーラムからの報告
 - 第4回JWFウェビナーの開催報告
 - シリーズ:水循環政策の動向-国連「水の10年」に向けて
・活動へのご⽀援・ご協⼒のお願い
・掲示板コーナー

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・巻頭言【特別寄稿】 生態学と河川工学のはざま(後編)―応用生態工学誕生
日本⽔フォーラム評議員 近藤 徹(応用生態工学会元会長/社団法人土木学会元会長)
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防災を政治対決にさせぬ決意
 この頃某自民党議員が「河口堰」中止を新聞に投稿、現地の反対運動に共産党議員と共に参加する等、マスコミの注目を浴びた。自民党建設部会は「我が党の議員が、共産党と反対運動をするのは許せない。この際「河口堰」推進の党議決定をしよう」という意見が出た。その時筆者は即座に「住民の生命財産を守る事業は党派に関係ありません。自民党が推進決議をすれば、社会党は反対決議をせざるを得ないので、見送って下さい」とお願いした。お蔭で社会党内に「河口堰」を理解する議員が数多く増えて、平成4年社会党本部が提案した「河口堰」工事中止決議は社会党総務会で圧倒的多数により否決された。
 「河口堰」反対運動は自然保護を旗印にしていたが、政治家、市民、マスコミが自然を解明した結果に基づく反対ではなく、時代の空気であったと思える。長良川沿川住民は、尾張藩防御の御囲堤より低い堤防高で長年苦しめられ、「河口堰」建設は地域の悲願であった。この騒動の本質は、当時の実務者が広報を怠っていたことが遠因と思う。

応用生態工学会発足
 平成9年、自然環境を専門に研究する生物学者と、河川改修・ダム建設を専門とする河川・ダム工学者・技術者が一堂に会し、互いの境界領域を新たな研究分野とする応用生態工学研究会の発足を宣言した。初代会長に元生態学会長川那部浩哉京大名誉教授を選出した。同教授は準備会で「この学会でいくら検討してもこのダムは中止との結論になった時どうしますか」と問われたので、筆者は即座に「中止します」と答えた。
 平成13年、機関誌「応用生態工学」が学術刊行物に指定された。翌平成14年、会の名称を「応用生態工学会」に変更、「新・生物多様性国家戦略」への学会意見を環境省に提出。日本学術会議会員の選出に係る学術研究団体に登録と活動範囲を広げた。本年9月には第25回総会及び研究会を開催し、四半世紀を迎える。ぜひ注目していただきたい。

生態系へ工学的なアプローチ
 筆者は生物学者、自然保護運動家に会うと、しばしば生態系と言う語を聴く。生態系はオックスフォード生態学辞典によれば、「生物と非生物が一体となって安定した系であって、食物連鎖やエネルギー流及び栄養塩の循環を含む基礎概念である」とする。筆者の所属した水資源開発公団は自然破壊と非難されやすいダム建設を所管していた。ダム工事の環境アセスとして、この辞典の食物連鎖に着目した。ダム流域全体を対象に、猛禽類研究者の指導でダム流域に生息する猛禽類のつがいの行動を観察し、営巣域、餌動物の少ない冬期の採餌域の植生を重点的に調査し、次世代の幼鳥が巣立つまでの行動の仔細を調査した。これに基づきダム工事が猛禽類の雛の成長を阻害させないためのダム工事の対策基準を策定した。
 筆者は第2回応用生態工学会で、「生態学者の研究は生態系の真理の探求だと思う。私達工学は真理でなく近似解でもよいとして頂けないか。生態系の第一次近似として食物連鎖を採用したい。生態系の最上位の種(例えば猛禽類)を指標種と設定して、その種が餌動物を確保できて、次世代の子孫を残すことができれば、その種は保全できる。その結果その種の生活領域の生態系は維持できると判断したい」と提案した。果たして何人か疑問が出された。しかし全面反対の意見はなかったので、筆者達工学の試行を見守っていただくことができた。現在ダムでは猛禽類を指標種とする調査、評価の環境アセスが行われるようになり、少なくとも自然破壊の元凶とする反対運動は沈静化していると思っている。

(出典:水資源機構ウエブサイト
https://www.water.go.jp/chubu/nagara/23_shisetsu/index.html)

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・⽇本⽔フォーラムからのお知らせ
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– INCHEM TOKYO 2021 セミナー「『その先』の未来へ-水から始めるイノベーション」を開催します

2021年11月17日(水)~19日(金)に、公益社団法人化学工学会と一般社団法人日本能率協会が主催する「INCHEM TOKYO 2021」が、東京ビッグサイトで開催されます。

日本水フォーラムは、11月17日(水)にセミナー「『その先』の未来へ―水から始めるイノベーション」を開催します。本セミナーでは、ポストSDGsに向けた、水の分野からの取り組みを提案します。水ingエンジニアリング株式会社様より、「下水からリンを地産地消―『KOBEハーベストプロジェクト』」とのタイトルで、その実例をご紹介いただきます。

最後に、2022年4月に熊本市で開催する首脳級会合「第4回アジア・太平洋水サミット」をご紹介し、アジア太平洋地域の水問題に関する動きをお知らせします。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/news/18786/

(報告者:アシスタント・マネージャー 田畑美世)

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・⽇本⽔フォーラムからの報告
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– 第4回JWFウェビナーの開催報告

9月22日(水)に第4回JWFウェビナーが開催されました。横浜における安定給水のための継続的取組をテーマとして、横浜市水道局の南部方面配水管理課南部水運用係長の中井一孝様にご講演をいただきました。ご講演の中で、横浜の安定した水供給を実現しているのは日々の確実な管理・運営であり、決して最先端の技術ではないこと。また、良い顧客サービスが、顧客の満足度を高め、水公社との契約に結び付き、収益の増収につながる好循環を生む ということをキーメッセージとして、具体的な横浜市水道局の取組について、配水管理、顧客管理の観点から分かりやすく解説していただきました。

◆日時   令和3年9月22日 16:00~
◆講師   横浜市水道局南部方面配水管理課南部水運用係長 中井 一孝 氏
◆トピック 横浜における安定給水のための継続的取組
◆参加者  126名

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/news/18778/

(報告者:マネージャー 吉井麗子)

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– シリーズ:水循環政策の動向-国連「水の10年」に向けて

国連では現在、「持続可能な開発への水の国際行動の10年」(2018-2028)が進行中です。2023年には、1977年以来約半世紀ぶりに水問題を主題とした国連会議が開催され、中間レビューが行われる予定です。
2022年4月に開催予定の「第4回アジア・太平洋水サミット」は、そのレビューに向けた主要なイベントとしてロードマップに位置付けられています。
「アジア・太平洋水サミット」は、日本の水循環基本計画でも、「8 国際的な連携の確保及び国際協力の推進」において重要な契機とされています。
日本水フォーラムは、会員はじめ関係皆様と共に、日本を含む世界の水問題解決の推進を目指し、このような政策提言に取り組んでいます。

▼「水の国際行動の10年」特設サイト(英語)▼
https://wateractiondecade.org/

(報告者:マネージャー 桑原清子)

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・活動へのご⽀援・ご協⼒のお願い
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「第4回アジア・太平洋⽔サミット(4th APWS)」
開催⽇程︓令和4(2022)年4⽉23⽇(⼟)〜24⽇(⽇)
4th APWSを円滑に開催できるよう、ご寄付・ご⽀援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
▼寄付の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/get-involved/donate-now/

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・掲示板コーナー
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【令和3年度河川基金研究成果発表会】
主催:公益財団法人河川財団
開催日時:令和3年4月1日(~令和3年10月31日)
視聴方法:Web上での配信
URL:https://www.kasen.or.jp/kikin/info/itemid793-001575.html

【河川基金助成 募集開始について】
主催:公益財団法人河川財団
開催日時:令和3年10月1日(~令和3年11月15日)
申請方法:河川財団HPより申請できます
URL:http://shinsei.kasenkikin.jp/login?

※免責事項︓⽇本⽔フォーラムは、掲⽰板の掲載情報に関して責任を負いかねます。
掲載情報へのお問い合わせは各主催者へお願いいたします。
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※掲⽰板への掲載希望、新規配信希望、配信停⽌・変更などは、下記アドレスまで
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JWF News Vol. 204 令和3年10⽉20⽇発⾏
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※[at]をアットマークに変えて送信してください。
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皆様の安全とご健康を祈念申し上げます。
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このコンテンツは、公益財団法人 河川財団の河川基金の助成を受けています。

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