アジア・太平洋水フォーラム（APWF） は、第4回アジア・太平洋水サミット（4thAPWS）開催までの間、アジア太平洋地域48カ国の政府職員、大使館職員及び日本政府の職員などを対象に、水分野の知見の幅を広げ、深化させることを目的としてAPWFウェビナーを開催しています。
第12回APWFウェビナーは、11月11日（木）に、国連アジア太平洋経済社会委員会（ESCAP）環境・開発部持続可能な都市開発課長カート・ギャリガン氏、同じく、環境・開発部、環境対策担当職員ソレーヌ・ル・ドーズ氏を講師として、「コロナウィルス感染症禍におけるアジア太平洋地域のSDG6進捗の促進」に関する議論を行いました。
第1に、コロナウィルス感染症禍におけるSDG6の進捗状況と課題について、ESCAPが最近出版したポリシーブリーフ 「コロナウィルス感染症禍におけるアジア太平洋地域のSDG6進捗の促進」の分析結果、及び、政策提言を発信しました。第2に、今年初めに開設された新しいEラーニングコース「海洋と水資源の保全」に関する最新の知見とベストプラクティスを共有しました。第3に、「国連 水の国際行動の10年」の中間レビューを支援するUN-Water地域ディスカッショングループの概要を紹介し、このプロセスに参加する機会を説明しました。
「SDG6とCOVID19の影響」に関するポリシーブリーフの発表では、まず、アジア太平洋地域の2021年におけるSDG6の進捗状況として、近年、進展がいくつかあるが、2030年の目標達成には程遠い。基本的な衛生設備を利用できない人が3億6,900万人、改善された飲料水を利用でない人が1億3,400万人いる。SDG6.4.2「水ストレス」の進捗は後退しているという分析結果を紹介しました。
また、コロナウィルス感染症は、すべてのSDGsの進捗に大きな影響を与えており、アジア太平洋地域では、6億3,600万人の脆弱な人々が貧困リスクにさらされていることについて触れ、SDG6の各目標とコロナウィルスの影響に関する分析結果を紹介しました。国や地域の水に関する信頼できるデータは依然として限られているが、水と衛生への介入は、公衆衛生と疾病予防のために不可欠であることを強調しました。
分析の結果、ESCAPは、アジア太平洋地域で、SDG6を達成するために、資金調達、データと情報、能力開発、イノベーション、ガバナンスの観点から、優先事項を明示し、政策提言として、次のことを強調しました。
- 政策立案者は、コロナウィルス感染症に関する緊急事態で得られた推進力を活用し、水・衛生環境（WASH）と水インフラの強化に向けた長期的なコミットメントを行うべき。
- 脆弱なグループが経験する水資源の問題は、必要に応じて財政支援を行うなど、国の復興行動計画で直接取り上げるべき。
- 特に学校、市場、診療所、拘置所などで、手洗い設備へのアクセスを改善すべき。
- 第一線で働く水・衛生環境分野の職員や医療従事者を支援する政策を実施すべき。
- 地域のコミュニティや市民社会グループによる、WASHの普及や、コロナウィルス感染予防策を支援すべき。
- 取水量のモニタリングや男女別のWASHデータなど、水に関するデータの収集を強化すべき。
- 統合水資源管理(IWRM)の政策立案に、人々の健康に関する指標とモニタリングを含めるべき。
- 自治体のIWRM能力を強化し、国政府の水に関する優先事項の調整を強化すべき。
- コロナ後の経済復興活動において、水に関連する生態系の健全性を守るための規定を設けるべき。
- 水インフラ投資に関する民間セクターの資金調達と官民パートナーシップを拡大すべき。
パネルディスカッションでは、聴講者からの質問をもとに、SDG関連データに関する議論を行いました。データ不足問題に対処していくためのESCAPの取り組みや、報告書執筆のためのキャパシティビルディングプログラムの紹介がありました。また、各国では、各自治体のデータをどう補完しているか、水関連SDG目標を達成させるために、国連機関間、及び、公的機関と民間企業がどういったパートナーシップを組んで協力・協働しているかが共有されました。また、データから解釈できる政策メッセージや、Eラーニングコースに関する議論を交わしました。
発表資料・動画
https://apwf.org/12th-apwf-webinar-accelerating-progress-towards-sdg6-in-the-asia-pacific-region/
| ポリシーブリーフ「コロナウィルス感染症禍におけるアジア太平洋地域のSDG6進捗の促進」は、 アジア太平洋水フォーラム（APWF）の4thAPWSにおける議論に寄与するために作成された文書です。 文書ダウンロード先： https://www.unescap.org/kp/2021/sdg-6-covid-19-accelerating-progress-towards-sdg-6-asia-pacific-region-context-covid-19 |
（報告者：マネージャー 朝山由美子）
