日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(APWF)は、8月8日(月)日本時間10時より、アジア開発銀行が主催した「アジア水フォーラム2022」においてサイドイベントを開催しました。このサイドイベントでは、気候変動を含む水災害に対して強靭で、誰も取り残されることなく、水の安全保障が確保された質の高い成長を実現していくための道筋を示すことを目的としました。 熊本宣言で掲げられた、水の観点から質の高い成長を実現していく上でのガバナンス及びファイナンスの課題の解決に向けて、各プレゼンターやパネリストは、 (1)科学的知見の役割の紹介とともに、各事業においてどのような科学的知見を共有し、各国の意思決定のサポートをしているか、(2)その地域に根ざした施策を策定・実施していくために、どういった人材育成を行っているかを共有しました。 その上で、アジア太平洋地域において質の高い成長を実現していくために何が必要かを議論しました。
基調講演において、東京大学大学院工学系研究科沖大幹教授(日本水フォーラム会長相談役)は、次の点を強調しました。
- 私たちは感知できない問題を解決することはできない
- 水は、持続可能な開発の中心的存在で、気候変動の影響を社会に伝えるメカニズムでもある。水は水先案内人であり、より良い未来のために世界を統合し、リードする資源である
- 多国間主義に基づくグローバルなパートナーシップを通じて、知識と技術を円滑に共有し合うことは、気候変動への適応策を適切かつ効率的に実施するために極めて重要である
各スピーカー・パネリストは、主に次のことを強調しました。
- 熊本宣言で示されたように、科学技術は、質の高い成長を促進する上で極めて重要かつ不可欠。資金調達とガバナンスは、科学技術の普及を促す重要なもの
- モニタリング、評価、予測のための地球観測と地理空間ツールを活用していくことの有効性
- 気候データ・情報、標準化、リスク評価手法の調和を図りつつ、気候変動に対する強靭性(レジリエンス)を高めていくことが重要
- 十分な情報に基づいた意思決定プロセスが重要。革新的で包括的かつ科学的知見と実績に基づいた解決策を多様な利害関係者に提示し、その理解・解釈・適切な活用を後押しすることが必要
- アジア太平洋地域において、科学的知見、政策と多様な利害関係者を結び付けるエンドトゥエンドのシステムを構築していくために重要なことは、科学的知見や技術的なノウハウの充実、制度設計とガバナンス改善に加え、社会的・文化的視点に配慮し、これらを適切に活かしていくこと。 これらの統合的な考慮がより質の高いインフラ整備にも繋がる
- ジェンダーの視点に立った気候情報サービスの提供が、災害リスクの備えをより確かなものにする。
- 気候変動を含む水災害に対して強靭で、誰も取り残されることなく、水の安全保障が確保された質の高い成長を実現していく上で、アジアでは、国境を越えた協働が不可欠。2030アジェンダの実施を加速するための道筋は、科学・技術・イノベーションの進歩と革新的な資金調達をどのようにうまく活用できるかにかかっている。科学・技術・イノベーションを活用した持続可能な開発目標を地域レベルで取り組むこと、災害に強い水インフラ、水・エネルギー・食料のネクサスアプローチが求められる。
プログラム 開会挨拶 第4回アジア・太平洋水サミット開催成果の報告 |
基調講演 |
プレゼンテーション |
パネルディスカッション パネルディスカッションへのリアクション |
まとめ・閉会の挨拶 |
(報告者:朝山由美子 日本水フォーラム チーフ・マネージャー(国際担当))