3月24日には、国連本部内サイドイベントルームでNoWNETメンバー機関等と「SDG6と気候変動対策の達成を牽引する官民パートナーシップの推進」と題したセッションを開催しました。本セッションでは、公的機関だけ、もしくは民間一機関だけの取り組みでは、総体的な解決が見込めない気候変動対策、とりわけ緩和策について、水循環管理における民間と公共のパートナーシップに焦点を当て、持続可能性や規模拡大に関する課題に対処する方策について議論を行いました。
欧州諸国、日本、韓国の各機関のスピーカーは、官民並びにセクター横断パートナーシップを通じた、健全な水循環管理、自然を基盤とした解決策及び環境・水・エネルギー・食料のネクサスについて、データ・情報、能力開発、イノベーション、ガバナンス・制度設計、マルチステークホルダー参画、資金メカニズムといった分野における各国の優れた事例や取り組みを共有しました。パネルディスカッションでは、官民それぞれの課題を整理し、パートナーシップにおけるギャップを埋めるNGO機関等の役割を始め、上流の水源から下流・海までの包括的な水循環管理を通じて、気候変動適応と強靭化を促進しつつ、温室効果ガス排出量の削減及びエントロピー最小化を実現するための教訓や提言等を発信しました。
JWFは、日本の取り組みとして、内閣官房水循環政策本部事務局が着手した企業の健全な水循環の取り組みをサポートする環境整備・官民連携事例を紹介しました。
◇リード機関:日本水フォーラム c/o NoWNET 事務局 |
聴講者との質疑応答では、官民のギャップから生じる課題を探り、改善に向けて、次の重要なポイントを確認しあいました。
- 官民の関わりにおける透明性確保の重要性
- 水資源問題に取り組むために両セクターと関わる市民社会の役割
- 成功したビジネスケースの例と、自然共生型ソリューションのための長期的な資金戦略の必要性
- 両セクターを巻き込むためのコラボレーション、科学的根拠に基づく計画、強力なビジネスケースの重要性
- 主要提言
- 透明性、データに基づく意思決定、包括的な知識システム、資金動員を実現するために、多様な利害関係者による統合的かつ協調的なアプローチによる多元のシステムを通じたガバナンスを強化する。
- 知見のギャップに対処し、ガバナンスの枠組みをさまざまなスケールやレベルに適応させるために、マルチアクター・ガバナンス・アプローチを用いて、ウィン・ウィンを達成し、シナジーを特定する。
- 意思決定を行う際には、水源から海までの水循環全体と相互に関連する生態系を考慮する。この全体的なアプローチは、トレードオフとコベネフィットの特定、自然に基づく解決策、システムのレジリエンスを強化するための資金調達メカニズムの構築によって、気候への適応と緩和を強化することができる。
- 包括的なガバナンス、法律、環境基準を導入し、すべての用途に十分かつ良質な水を確保するとともに、環境リスクをもたらす物質の監視と解決策を開発する。
- 流域レベルでの長期的な水管理のために、水の消費習慣を変えるよう人々を関与させる。
- 経験、知識、技術を積極的に共有し、持続可能な水管理のベストプラクティスを採用することを奨励する。
- 意思決定に全体的なアプローチをとり、水源から海までの水循環全体と相互に結びついた生態系を考慮することに重点を置き、気候緩和と適応のための「水源から海まで」(S2S)管理を実施する。
- 民間部門を含むすべての利害関係者のトレードオフと相互利益を特定することにより、断固とした行動の障害となる断片的なガバナンスに対処する。
サイドイベントプログラム
セッション紹介 |
キーノートプレゼンテーション: The essential drop to Net-Zero: Unpacking freshwater’s role in climate change mitigation: Water-wise integrated approaches and nature-based solutions as tools for climate mitigation |
ショーケース |
聴講者を交えたパネルディスカッション |
セッションとりまとめ Dr. Thomas Rebermark, ディレクター |
(報告者:日本水フォーラム チーフマネージャー 朝山由美子)