2007(平成19)年3月、ダルビッシュ有投手(現MLB サンディエゴ・パドレス所属)は、日本水フォーラムと協力して、水不足や水の汚染などに苦しむ発展途上国の人々に安全な水を提供することを目的に、「ダルビッシュ 有 水基金」を設立しました。ダルビッシュ有投手は、公式試合で勝利投手となるごとに、同基金に10万円を寄付することを続けています。
この基金を用いて、これまで11カ国で計16件のプロジェクトを実施してきました。
第16号プロジェクト ジミレトク村の水と衛生プロジェクト
第16号プロジェクト概要
ジミレトク村には、2020年にミヤグデ地域自治体が給水設備を設置しましたが、給電できない地域にポンプを設置したので利用されないまま設備を取り壊しました。住民は古い共同水栓に頼らざるを得なかったのでしたが、水質は悪く乾季(3-6月)にはこの水栓さえ使えなかったので、最寄りの小川に往復3時間以上かけて水を汲みにいかなければなりませんでした。水が手に入りにくかったので、衛生状態は悪かったです。この村の給水設備改修を支援することで、村民の水へのアクセスおよび衛生状況改善が見込まれました。
【プロジェクト実施後】
1.実施地
ネパール ガンダキ州 タナフ郡 ミヤグデ地域自治体 ジミレトク村
2.受益者数
計22世帯(男性47名、女性51名、子ども36名、計134名)
3.実施期間
2023年5月~2024年1月
4.現地パートナー団体
現地実施団体: Water Center Twenty One Pahal (以下WC21Pとする)
ウェブサイト: https://www.water21st.com
2021年に発足した、ネパール国の登録非営利活動法人。本拠地はバグマティ州チトワン郡。
5.実施地の水問題
- 2020年に地元のミヤグデ地域自治体によって給水施設を設置したが、送電網がなかったのでポンプを給電利用できず、施設はすぐに取り壊されてしまった。
- 住民は水へのアクセスを古い共同水栓に頼っているが、水質は悪い。
- 乾季(3-6月)にはこの水栓が使用できないため、最寄りの小川に3時間以上かけて水を汲みにいかなければならない。
- きれいな水が手に入りにくいことから、衛生状況が悪い。
6.プロジェクト概要
建設工事は完了して、各戸向け22カ所の水栓柱はすべて機能するようになりました。ミャグデ地域自治体、WC21P、Water Users and Sanitation Committee(利用者管理委員会、以下WUSC)の間では、三者協定が結ばれました。ミャグデ地域自治体のご支援には非常に感謝しています。受益者の方々は、ポーター、基礎工掘削、資材運搬、管路の掘削埋め戻しを無償奉仕するなど信じられないほどの貢献をなさいました。設備管理者が一人、WUSCによって研修と雇用をされて(給与:2,000NPR/月(ネパールルピー、1NPR=1.13円))、利用者から一世帯の月間最低使用量5,000リットルに対して、150NPR/世帯/月の水道料金の徴収を開始しました。地域自治体の支援金は、協定に従って実施されました。2024年1月にプロジェクト落成式が行われ、引渡されました。
【実施項目】
1) WUSCの設立と登録
2) 三者協定の締結
3) 建設前研修
4) 資材の調達、輸送、保管
5) 石積み取水設備の建設
6) 送水管路直径32ミリ延長250メートル、配水管路直径20ミリ延長200メートルの掘削、既設管網の補修、管材の布設、埋め戻し
7) 集水井の修理と保護
8) 2馬力ソーラーポンプ1台の設置
9) 世帯各戸の水栓柱修理、検針メーターの設置と試験
10) 完工研修
11) 設備管理者の建設工事中OJT研修
12) 健康と衛生に関する意識向上キャンペーン
13) 設備管理者への維持管理研修、雇用、毎月の水道料金の徴収
14) トイレ無1世帯へのトイレ建設
15) 看板/表示板設置
7.成果
- 22世帯が各戸で安全な飲料水を手に入れることができる。
- 安全な飲料水により水系感染症が減り、住民の健康状態が改善される。
- 日々の水汲みが不要になれば、1日当たり約3時間節約できる。その時間を、家事・経済活動・子どもたちの勉強など他の社会活動に振り向けることが可能になる。
【関連するSDGs】
SDG 3:すべての人に健康と福祉を
SDG 4:質の高い教育をみんなに
SDG 6:安全な水とトイレを世界中に
8.受益者からの声
1)カイマ・デヴィ・ビシュワカルマさん、58歳、ダリット族、農業
家に水があることに感謝します、ご寄付をされた方は私にとって神様のようです。この村で水が手に入るとは予想外でした、今や家庭菜園にも水が使えるようになりました。このプロジェクトが始まるまでは、遠く離れた水源から1時間以上かけて水を汲みに行っていました。安全な飲み水の提供で、私たちの命を救ってくださりありがとうございます。
2)プレム・クマリ・シンジャリさん、36歳、WUSC秘書
プロジェクト以前は、伝統的な共同水栓から1回1時間以上かけて水を汲んでいました。もう私たちの家には水があり、家庭菜園にも使っています。私は各戸150NPRの水料金を徴収する責任者で、ディーパク・ビシュワカルマさんが設備管理者です。私たちの家庭に、水を供給してくださった皆さんに感謝いたします。
【プロジェクト実施前】
【プロジェクト実施中】
ダルビッシュ有投手をはじめとして、当基金へご寄付いただいた皆さま、現地パートナー団体、受益者や自治体関係者等、多くの方々にご支援ご協力を賜り、本プロジェクトを実施できました。厚く御礼申し上げます。
▼ダルビッシュ 有 水基金や過去に実施したプロジェクト、参加方法についてはこちら▼
https://www.waterforum.jp/what-we-do/darvish/
(報告者:プロジェクトマネージャー 鈴木武二郎)