1.アクアプログラム2023とは
アクアプログラムは、ジュエリーブランド『4℃』を展開する株式会社エフ・ディ・シィ・プロダクツと日本水フォーラムとの共同プロジェクトです。
「水」を通じた社会貢献により、水に関する問題を抱える途上国の人々を支援し、「美しさ」と「ときめき」を届けることを目指して、2008年のプロジェクト開始から、これまでキリバス、スリランカ、バングラデシュで活動を展開。2017年からは水問題に苦しむバングラデシュの沿岸部農村地域を対象に、継続的に活動を実施しています。
アクアプログラム2023では新たに40世帯を対象として、雨水を貯留するAMAMIZUタンクを設置し、併せてこの設備の維持管理のためのトレーニングなどを行いました。
▼アクアプログラム オフィシャルウェブサイト▼
アクアプログラムは下記のSDGs達成に貢献しています。
2.アクアプログラム2023の概要
1)プロジェクト名
アクアプログラム 2023
2)実施地
バングラデシュ クルナ管区 バゲルハート県 モレルガンジ郡 バライクハリユニオン ウッター・スタロリ村の第4地区
Created by Mapchart
3)受益者数
40世帯、164人
4)実施期間
2023年10月~2024年8月
5)現地パートナー団体
Skywater Bangladesh Ltd.(SBL)
6)実施地の水問題
本プロジェクトの対象地であるモレルガンジ郡には、水道がなく、住民たちは生活用水や飲み水をため池や井戸から汲んだ水や、水売りから購入した水に頼っています。
水汲みは特に女性や子どもたちにとって重労働となり、水の購入費用は家計を圧迫しています。また、汚染された水源が原因で下痢などの水系感染症にかかる住民も多く、治療の費用がさらなる負担となっています。
7)実施内容
・基礎調査/ソーシャルマップの作成
・AMAMIZUタンク2基と集水配管一式を40世帯に設置
・維持管理に関するトレーニング
・雨水利用に関する知識と経験の共有ワークショップ
・世帯訪問によるフォローアップ
・水質検査
8)サイクロンレマル大災害による損害の補修と計画の遅延
維持管理トレーニングを行おうとする直前の2024年5月26日(日)、壊滅的なサイクロンレマルがバングラデシュの沿岸部を襲いました。サイクロンレマルは約15万戸の家屋を破壊し、数百万人の生命に影響を与え、経済とインフラに多大な被害をもたらしました。
4℃アクアプログラム実施地も洪水により道路が大きく損傷して、2週間以上プログラムを継続することも、受益者世帯に近づくことさえ不可能でした。アクアプログラム2023が対象とする40世帯のうち17世帯でサイクロンの被害を受けたと判明して、SBLの現地チームは補修に全力で取り組み、6月15日までにすべての被災世帯で補修を完了しました。維持管理トレーニングは4週間以上計画から遅れた6月24・25日に行われました。
9)期待される効果
・特に女性や子どもたちが、水汲みの負担から解放される
・40世帯が雨水を活用して安全な飲み水を利用できるようになる
・水の購入にかかる費用や水に起因する病気が削減される
3.アクアプログラム2023現地写真
4.アクアプログラム2023 受益者の声
Mossamat(Mst.) Asma Begumさんは、夫のMohammad(Md.) Kawsar Hawladerさんと3人の子供たちとモレルガンジに住んでいます。Kawsarは日雇い労働者として働き、時にはバン(荷物用3輪自転車)を運転して家族を支えています。懸命に働いているにもかかわらず、この家族は清潔な飲料水を手に入れるのに苦労していて、Asmaさんと息子は毎日1,000メートル以上歩いて水を汲みに行かざるを得ない状況でした。
Asmaさんはご経験を話されました。
「数年前に4℃アクアプログラムのことを知ったのですが、経済的に困難だったのでAMAMIZUタンクを申し込めませんでした。私たちが汲んでいた水は汚く、子どもたちはよく病気になっていました。水汲みに費やす時間は、息子の勉強や私の家事を妨げていました。なかなか難しい状況で、出口が見えませんでした。」
2022年末にAsmaさんの決心を固めた、不幸な出来事がありました。ある日、水汲みの最中に足を滑らせて転倒して、数カ月間まともに歩けないほどの大怪我を負ったのです。翌年、彼女の息子も水汲み中に2度にわたって軽傷を負いました。これらの事故から、もっと安全で信頼するにたりる水源が必要だと明らかになりました。さらに、一家は政府から支給されるプラスチック製のタンクを検討したところ、物足りなさを感じました。「プラスチック製のタンクは割れやすく、夏の暑い日には中の水を清潔のままにも、冷たさも保てません。うちにはもっと丈夫で使えるものでないと。それで、AMAMIZUのシステムを選びました」とAsmaさんは説明しました。
2023年の暮れに行われたSBLのチームによる世帯調査において、Asmaさんは経済的には難しかったにもかかわらずAMAMIZUの申し込みを決めました。数カ月後、申請は承認されて雨水貯留システムが設置されました。
Asmaさんは振り返って語られました。
「変化はすぐに現れ、すごかったです。以前は、私は息子と何時間もかけて水を汲みに行き、汚れた水で病気にならないかしらといつも心配していました。今は、家にきれいな水があります。子どもたちは健康になり、勉強する時間も増えました。息子は水汲みのために学校を休まなきゃいけないことはなくなり、私は家事を効率的にこなせるようになりました。たった1、2ヶ月の間に、私たちの健康状態は大幅に改善されました。SBLと日本のご協力者に心から感謝します。AMAMIZUタンクは私たちの肩に乗っていた重荷を下ろしてくれました。私たちの生活は、以前には想像ができないほど良い方向に変わりました。」
5.御礼
アクアプログラム2023はサイクロンレマル大災害によって、株式会社ヨンドシーホールディングス及び株式会社エフ・ディ・シィ・プロダクツをはじめ、活動に参加いただいた世帯、実施地の地方行政関係、現地パートナー団体のみなさまに例年以上のご支援とご協力を賜りました。お陰様で本プロジェクトを実施・完了することができました。心より厚く御礼申し上げます。
(報告者:プロジェクト・マネージャー 鈴木武二郎)
2024年2月に、長年にわたり現地パートナー団体Skywater Bangladeshでアクアプログラムの責任者をされたM. Wahid Ullah氏が逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。
以上