
日本水フォーラムは、水制度改革議員連盟(水議連)の下部組織である「水循環基本法フォローアップ委員会」(FU委)の委員を拝命しています。2025年2月28日(金)~3月2日(日)の3日間、水議連・FU委で能登半島を訪問する機会があり参加させて頂きました。昨年お正月の地震とその後の豪雨災害について、地域の皆様から水関連の状況についてお話を伺い、今後の水循環政策の参考とさせて頂くための訪問です。議員・委員含め約20名が、3日間の旅程の一部または全部にそれぞれ参加しました。
3日間の訪問先では、七尾市、輪島市、珠洲市、能登町などの地域の行政や市民の方々から、発災時からこれまでの水関連の状況について貴重なお話をたくさん伺い勉強させて頂きました。例えば発災時、避難所では、この能登でもトイレが重要課題になっていたと伺いました。災害時の避難所では、水洗トイレが使えない状態であれば、衛生環境があっと言う間に悪化します。14年前の東日本大震災でも、その避難所や避難生活で、トイレは大変重要な課題でした。また例えば、家の前まで来ていた水道管が復旧しても、家との接続部分の水道管が破損したままでは、家の蛇口を開けても水は出てきません。当たり前に出ていた水、当たり前に流していた水が、無いのです。学校や病院も、「水と衛生」が整っていることが大前提です。「水と衛生」は、謂わば人間の安全保障そのものです。このように、SDGs目標6「水と衛生」は、開発途上国のみならず、日本の問題でもあるのです。
一口に水と言っても、飲む水だけではありません。洗う水(洗濯や風呂など)、消火の水、トイレを流す水などさまざまです。農業から工業、商業、金融…水と関係が無い産業があるでしょうか。いえ、ありません。日本は高度経済成長期を通じて、様々な水の利用を可能にする水インフラが発達しました。しかし、それらが被災したらどうするか。事前防災やビルド・バック・ベター(Build Back Better、より良い復興)は、ハードとソフトの両面で必要です。
のと里山海道、輪島港、白米千枚田、七尾湾などを経ながら、能登の豊かな自然、世界農業遺産「能登の里山里海」、そして日本の高度経済成長時代と地続きな現在を感じました。営業を再開した旅館や飲食店等のご尽力にも触れました。水は、地震や大雨等の災害時、ひいては人口減少時代の日本の地域社会において、極めて重要な課題であることを改めて認識しました。自然と人の営みを支えるのは水です。
持続可能で強靭な社会を、実現し維持していくのは、難しいことかもしれません。しかし今、水の観点だからこそ、できることがあると考えます。水の利用、衛生、災害、環境、経済、文化といったテーマを有機的に結び付け、新たな取組みを推進していくことです。今後も日本水フォーラムは、水議連・FU委への参画を通じ、また自らの政策提言活動を通じ、健全な水循環社会の実現を、多様な皆様と共に目指して参ります。
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(報告者:日本水フォーラム チーフ・マネージャー桑原清子)