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【JWF News Vol.160】 第3回アジア・太平洋水サミット『ヤンゴン宣言』邦訳版公開!
2018年1月17日発行
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◇目 次◇
・巻頭言 縦割り行政の克服
・日本水フォーラムからのお知らせ
– 第3回アジア・太平洋水サミット『ヤンゴン宣言』邦訳版公開!
-【2月27日】シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』ご案内
・活動へのご支援・ご協力のお願いについて
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・巻頭言 縦割り行政の克服
代表理事 竹村公太郎
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平成30年の新春にあたり、皆様方のご健康とご活躍を心よりお祈り致します。
会員の皆様方や多くの方々に支えられ、私ども日本水フォーラムは一歩一歩着実に歩んでまいりました。
昨年12月11日―12日、ミャンマーで第3回アジア・太平洋水サミットが開催されました。開会式はミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家最高顧問の挨拶で始まり盛大に行われました。
この水サミットは、国際NGOであるネットワーク組織「アジア・太平洋水フォーラム(APWF)」が、ホスト国政府と共催するものです。NPO法人日本水フォーラムは、APWFの事務局を務めています。
水サミットには、アジア太平洋諸国の政治のトップリーダーが集まります。しかし、この会議は政府レベルの会議ではなく、NGO/NPOの自由な活動なのです。
それがなぜ、政治のトップリーダーの水サミットなのか?答えは明快、「縦割り行政の克服」です。
水行政の複雑さ
水行政は複雑です。数ある行政の中で最も複雑である、と断言して良いでしょう。水行政に関する法律と所管する官庁を見ればわかります(図-1)。
(図-1) |
行政は法に規定されて執行される。言い換えると、行政は、法に基づかない事項には手を出しません。一方、人間の社会活動は、全て法に記述され規定されうるものではありませんから、社会活動の中で各行政の間には、法に規定されない隙間ができてしまいます。特に現代の社会活動は複雑で幅広い。行政に隙間があれば、人々の社会活動はその隙間に落ち込んでしまいます。
これが縦割り行政の問題点です。
縦割り行政モデル
行政の縦割り行政の隙間に落ち込み、苦しむ社会活動や人々をモデル化したものが(図-2)です。
(図-2) |
ビンが各分野の行政、ビンの下に敷かれているコースターが、各行政所管の法律です。行政はその所管法律に基づいて、縦方向に展開され、ビンの下のコースターの法律は、国民が社会生活を営むために隙間なく配置されています。しかし、ビンの先端、つまり行政の末端では、ビンは窄まり行政の隙間ができてしまう。
この隙間に落ちたら、どの行政も助けてくれません。何しろ、どの行政にとっても、その隙間は自分の行政の所管ではないから、わざわざ自分からビンの外へ出て行って、隙間に落ちている人を助ける義務はない。逆に、助けようとして失敗でもしたら責任を問われてしまいます。ですから行政官は、ビンの中で腕組みをして、じっとしているしかないのです。
誰の責任でもない。しかし、間違いなく行政の狭間で人々は苦しんでいます。
全ての分野の行政で縦割りの弊害はあります。その中で、最たるものが水分野の行政なのです。
「衛生改善と汚水管理」の分科会
第3回アジア・太平洋水サミットでは、10のテーマ別分科会も開催されました。その中で、「衛生と汚水管理の改善」という分科会がありました。その分科会の主催は日本の国土交通省と環境省、そして民間団体の日本サニテーションコンソーシアムでした。
私の目を引いたのは、この分科会の主催に国交省と環境省が並んでいたことです。両省が主催者として並ぶという記憶はありませんでした。それがどのように進められるのか興味がありました。
分科会当日、国交省下水道部の幹部と環境省幹部が参加していました。
本当に驚きました。あの仲の悪かった両省の幹部が、いまミャンマーで協力している。共同で分科会を運営し、アジア太平洋諸国の衛生の専門家たちとの会議をリードしているのです。
20年前、私が行政官として現役のころ、国交省と環境省の公衆衛生行政の事業は犬猿の仲でした。国交省の下水道事業と環境省のし尿処理事業は事業の取り合いを繰り広げていました。国家予算の中で、いかに自身の事業予算を拡大するか、相手より予算の伸びを増やすかが最大の課題でした。
ミャンマーで、国交省と環境省の担当官に、別々に囁いてみました。「仲の悪かった同士が並んで協力するなんて信じられない」。すると両省の担当官たちは「そうですね昔と比べると隔世の感ですね」と言う。さらに、国交省の担当官は「このような国際会議があるから一緒に協力できるのですよ」と付け加えてくれました。
縦割りの克服
今回のサミットでの、国交省と環境省の協力は心から嬉しいものでした。アジア・太平洋水サミットは、アジア太平洋地域の健全な発展に貢献するだけではありません。日本国内の行政の進化にも貢献しているのです。私が日本水フォーラムで長くNPO活動をしていたのは、このためであったと言っても過言ではありません。
(図-3)の隙間を埋めるのは、民間企業でありNGO/NPOです。その点、分かってはいましたが、具体的な事例をなかなか見いだせずにいました。しかし、今回ミャンマーで、その事例を目の前で見ました。私たちNPOの活動の場が、縦割り行政の隙間を埋める一粒になったのです。
(図-3) |
この一粒は小さい。しかし、この事例は水分野のみならず、多くの行政分野にも影響を与えていく力を秘めています。
行政の隙間を埋めていくのは、民間企業、NGOそして市民団体です。言葉上の「官民協力」ではなく、実体として官民一体を具現化していく。
そして、日本社会の再構築の時代へ入っていくことになるのです。
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・日本水フォーラムからのお知らせ
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第3回アジア・太平洋水サミット『ヤンゴン宣言』邦訳版公開!
昨年、2017年12月11日~12日の二日間にわたり、ミャンマー、ヤンゴンにおいて、「第3回アジア・太平洋水サミット(3rd Asia-Pacific Water Summit: 3rd APWS )」が開催されました。
同サミットは、日本水フォーラムが事務局を務めるネットワーク組織「アジア・太平洋水フォーラム(APWF; Asia-Pacific Water Forum)と、ミャンマー政府により共催されたものです。
その成果文書として採択された『ヤンゴン宣言(Yangon Declaration)』の日本語版(日本水フォーラム訳)を公開します。
▼詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/policyrecommendations/2018/0111/?p=7557
▼第3回アジア・太平洋水サミット公式ウエブサイト(英語)▼
http://apwf.org/summit/myanmar2017/
(報告者:マネージャー 桑原清子)
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【2月27日】シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』ご案内
日本水フォーラムは、来る2月27日(火)14:00~(開場13:30)、シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』を開催します(於:東京都千代田区永田町)。
国連持続可能な開発(SDGs)やパリ協定、日本の水循環政策など、国内外の重要な動向を踏まえ、水の視点と長期かつ広範なビジョンのもと、次世代の行動に向けて闊達な議論を行います。多数のご参加をお待ちしています。
参加お申込の皆様には、2月23日(金)迄に、当日参加証をEメールにてお送りします。
▼参加お申込方法・概要等の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2018/0117/?p=7584
(報告者:マネージャー 桑原清子)
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・活動へのご支援・ご協力のお願いについて
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日本水フォーラムは、皆様の会費及び寄付等によって国内外の水問題解決に向けた活動を行っております。
日本水フォーラムの活動を支援していただける会員を募集しております。
水問題解決に向けた持続可能な取組みを行うために、皆様の温かいご支援をなにとぞよろしくお願いいたします。
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