JWFファンド2017
JWFファンドは、2005年に日本水フォーラムが設立し、独自に運営する助成基金です。
発展途上国の水問題解決のために草の根活動を行っている団体を対象に、毎年プロジェクトを公募し、採択された団体には、1プロジェクト当たり1,000USドルを上限とした支援を実施しています。
この基金は、日本水フォーラムの会費や、一般の方からCharity for Waterに寄せられた寄付等により運営されています。
JWFファンド2017では以下のとおり公募を行い、31カ国211件の応募のうち、6カ国7件のプロジェクトを支援しました。
公募概要
・公募期間:2017年6月1日~7月31日
・対象国:経済協力開発機構 (OECD)の「THE DAC LIST OF ODA RECIPIENTS Effective for reporting on 2014, 2015, 2016 and 2017 flows」におけるLeast Developed Countries、Other Low-income Countries、Lower Middle-income Countries/Territoriesの計 88カ国
・応募件数:31カ国、211件
・支援件数:6カ国、7件 (エチオピア1件、カメルーン1件、ケニア2件、インド1件、バングラデシュ1件、フィリピン1件)
報告書
JWFファンド2017 報告書 (日本語・PDF)
JWFファンド2017 報告書 (英語・PDF)
JWFファンド 2017の支援先
1. ンクム・エキエ村における命のための水供給プロジェクト(カメルーン)
プロジェクト概要
・実施団体:Community Awareness and Development Association Cameroon (CADAC) (#172)
・プロジェクト名:ンクム・エキエ村における命のための水供給プロジェクト
・実施国・地域:カメルーン、中央州
・実施期間:2017年10月~2018年3月
・受益者数: 直接受益者数179人、間接受益者数2,000人
・実施費用:1,594.54ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者の負担100ドル、CADAC等の負担494.54ドル)
カメルーン |
実施地の課題
2014年から2016年にかけて実施された国家世帯統計局の調査によると、他の地域では腸チフスや下痢症など汚染された水に起因する病気の発生が減っているのに対し、実施地では未だこのような病気が流行していることが分かった。ンクム・エキエ村の人びとは、遠く離れた川から水を汲んでいるが、この川は洗濯や皿洗い、水浴びにも使われている。さらに、この周辺には蚊が多く、女性や子どもたちはマラリアにかかる危険に晒されている。このような状況であるが、地域の保健所にも安全な水供給設備はない。
プロジェクト実施事項
1)関係者調整会議の開催
2)水と衛生、健康に関するワークショップの開催
3)井戸を1基建設
4)水質検査の実施
これらの活動により、ンクム・エキエ村の住民が安全な飲み水を得られるようになったため、汚染された水による病気の減少が期待される。
現場からの声
- ピエール・ロンギンさん(男性、30歳、ヘルスセンター設立者)
このプロジェクトは、恵まれない人々にとって有益で人道的な取組でした。また、人々の苦しみを和らげ、新たな生活をもたらすというCADACとヘルスセンターの価値を向上させました。支援してくださったJWFに感謝します。ありがとうございました。 - ンバルガ・アボイ・マルーセルさん(女性、38歳、女性リーダー)これまで、汚れた水の利用が腸チフスや赤痢といった病気の原因でした。幸いなことに、このような病気は減っています。ワークショップが実施され、井戸が建設されたおかげです。
- エコモ・フランコスさん(男性、33歳、青年協議会の会長)
これまでは、汚染された川から水を汲んでいたため、この地域では水に関連する課題がありました。また、住民たちが川で水浴びをするために水は汚れ、飲み水には適していませんでした。いまはプロジェクトのおかげで子どもやその親たちが安全な水源を利用できるようになりました。ですが、井戸が深いので、ハンドポンプがついているといいなと思います。
住民が利用していた水源 | 完成した井戸 |
2.小学校への衛生設備建設と衛生に関する啓発活動(ケニア)
プロジェクト概要
・実施団体:Renewed Hope Group (RHG) (#054)
・プロジェクト名:小学校への衛生設備建設と衛生に関する啓発活動
・実施国・地域:ケニア、カカメガ郡
・実施期間:2017年10月~2018年2月
・受益者数:1,200人 (女児800人、男児400人、教師20人)
・実施費用:1,339ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者より199ドル、RHGより140ドル)
ケニア |
実施地の課題
実施地域に唯一あるエシル小学校には1,200人の児童が通っている。しかし、トイレが2基しかなく、あと半年で肥溜めが一杯になってしまう。休み時間にはトイレに長蛇の列ができ、授業に遅れる児童や、授業に間に合うように周辺で野外排泄をする児童もいる。彼らは衛生に関する知識がないうえに、小学校には手洗い場が無い。このため、少なくとも4割の生徒が、不衛生による病気に毎年かかっており、地域の保健所が定期的に学級閉鎖をさせている。
プロジェクト実施事項
1)プロジェクト実施委員会の設立
2)VIPトイレ3基*と小便器の建設
*VIPトイレ:Ventilated Improved Pit Latrineの略称。通気改良型ピット式トイレなどと呼ばれる。
3)手洗い場4基の設置
4)衛生習慣に関する啓発活動を1回実施
5)維持管理体制の構築
これらの活動により、学校に通う児童と教師が継続的に衛生設備を使用できるようになるため、学校の学習環境が改善されることが期待される。
現場からの声
- アンジェラ・シミユさん(エシル小学校に通う女児、13歳)
新しく建設されたトイレを使えることが嬉しいです。これからは、用を足しに学校の周りの茂みに行くことはないと思います。 - トム・カオヤさん(エシル小学校に通う男児、12歳)トイレの使い方と手洗いの方法、それによってどう病気を防ぐことができるのかを知ることができました。啓発活動はとても重要だったと思います。新しいトイレができて、衛生環境が良くなり、学校の周りや敷地の野外排泄はなくなると思います。
- ジャネット・ワシケさん(エシル小学校の教師、34歳)生徒が病気になることが減り、野外排泄による悪臭がなくなり、生徒が休憩時間内に教室へ戻れるようになりました。授業の進行を妨げるものがなくなり、教員たちも喜んでいます。
トイレに並ぶ児童たち | 建設したVIPトイレ |
3.湧水の保護によるルヒヤヘ地域の安全な水へのアクセスの促進(ケニア)
プロジェクト概要
・実施団体:Ufanisi Women Group (UWG) (#031)
・プロジェクト名:湧水の保護によるルヒヤヘ地域の安全な水へのアクセスの促進
・実施国・地域:ケニア、ブンゴマ郡
・実施期間:2017年10月~2018年2月
・受益者数:750人 (女性150人、男性150人、子ども450人)
・実施費用:1,389ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者の負担258ドル、UWGの負担131ドル)
ケニア |
実施地の課題
実施地には150世帯が住んでおり、住民たちは遠く離れた湧水を水源として使用している。しかし、この水源は保護されておらず、ごみや野外排泄による糞尿などが流れ込むため、ひどく汚れている。この水を煮沸などせずに使用しているため、住民たちは下痢症になる、あるいは亡くなるなどしている。村の約半数が病気の治療のために毎月診察所を訪れているほか、時々発生する病気の流行のために、保健所が地域の小学校を学級閉鎖することもある。
プロジェクト実施事項
1)プロジェクト実施委員会の設立
2)湧水保護設備の建設
3)衛生と維持管理に関するトレーニングを3回実施
3)維持管理委員会の設立
4)水質検査の実施
これらの活動により、ルヒヤヘ地域の住民150世帯750人が安全な飲み水を利用できるようになったため、汚染された水に起因する病気の減少が期待される。
現場からの声
- アンナ・マロバさん(地域保健員の女性、34歳)
水関連の病気の発生は今や過去のものとなりました。湧水が保護されたおかげで、地域の人々は健康になり、病気の治療にかかっていた薬代も減りました。 - サラ・ムンブアさん(小規模農家の女性、25歳)
水を自由に使えるようになり、農業に充てられる時間が増え、より良い衛生習慣が身につきました。 - ジョフリー・アソンビさん(ルヒヤヘ地域のリーダー、男性、28歳)
プロジェクトのおかげで、この地域の住民が、安全できれいな水を利用できるようになりました。これまで住民たちは、汚れた水を飲んでいたために、水に起因する病気にかかって衰弱したり、命を落としたりていました。診療所の病床は、このような水に関連する病気にかかった患者でいっぱいでした。私たちは治療のためにたくさんのお金と時間を費やしていました。しかし、JWFファンドによるUWGのプロジェクトが、解決策をもたらしてくれました。
住民が水源として使用していた湧水 | 湧水保護設備の建設 |
5.井戸の修繕と衛生・維持に関する啓発活動、青年の維持管理能力向上トレーニング(インド)
プロジェクト概要
・実施団体:Rural Action In Social Emancipation (RAISE) (#047)
・プロジェクト名:井戸の修繕と衛生・維持に関する啓発活動、青年の維持管理能力向上トレーニング
・実施国・地域:インド、アーンドラ・プラデーシュ州
・実施期間:2017年10月~2018年3月
・受益者数:230人 (女性80人、男性100人、子ども50人)
・実施費用:1,030ドル (JWFファンド1,000ドル、団体の負担30ドル)
インド |
実施地の課題
ジョセペット村の住民のほとんどは下層階級に属しており、読み書きができない。この村には、数十年前に建設された浅井戸と掘り抜き式井戸がある。しかし、浅井戸は住民が適切な使い方を知らないために汚れ、開口式であるために汚染され、赤痢や下痢症、肝炎といった水に関連する病気が発生している。また、掘り抜き式井戸は経年劣化により、汲み上げた水に泥が混ざる。
プロジェクト実施事項
1)既存井戸5基の修繕と洗浄
2)水と衛生に関する啓発活動の実施
3)維持管理トレーニングの実施
4)水質検査の実施
これらの活動により、ジョゼペット村の住民たちが安全な飲み水を得られるようになったため、汚染された水による病気の減少が期待される。
現場からの声
受益者たちは、農村部の人々の生活改善をもたらしたプロジェクトに喜んでいる。青年たちへの維持管理に関するトレーニングの実施により、受益者たちが持続可能性への期待を持つことにつながった。JWFに心より感謝している。
汲み上げた水に泥が混じる掘り抜き井戸 | 井戸の洗浄 |
6.衛生設備と水供給設備の建設による子どもの教育環境の確保(バングラデシュ)
プロジェクト概要
・実施団体:BASCO Foundation (#157)
・プロジェクト名:衛生設備と水供給設備の建設による子どもの教育環境の確保
・実施国・地域:バングラデシュ、マグラ県
・実施期間: 2017年10月~2018年3月
・受益者数: 80人 (女児24人、男児16人、女性40人)
・実施費用:1,365ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者の負担125ドル、BASCO Foundationの負担240ドル)
バングラデシュ |
実施地の課題
ロイガン村には公立・私立学校がなく、地域住民が運営する学校には恵まれない40人の子どもが通っている。しかし、この小学校は政府による支援を受けられず、適切なトイレや水供給設備がない。このため、児童たちは野外排泄をし、汚れた水を飲んでいる。特に女児たちは野外排泄に抵抗があり、学校に行きたがらない。このため、女児の中退率は高く、母親たちは女児を学校に行かせることに消極的になっている。
プロジェクト実施事項
1)ピットラトリン*とハンドポンプ付き井戸を各1基建設
*ピットラトリンとは、地面に排泄物を溜める穴と床板から成る衛生設備の一種。
2)水衛生委員会の設立
3)設備の利用と健康に関する啓発活動を2回実施
4)水質検査の実施
これらの活動により、学校に通う児童とその保護者が衛生設備と給水設備を利用できるようになったため、学校における学習環境が改善されていくことが期待される。
現場からの声
- リミ・ハトゥンさん(8歳、学校の女児)
私の名前はリミ・ハトゥンです。2年生です。トイレと井戸ができる前は、たくさんの問題がありました。学校では汚れた水を飲み、空き地や茂みで用を足していました。でも今は、JWFとBASCO Foundationがトイレと井戸を作ってくれたので、気を使う必要がありません。とても幸せです。病気にかかることなく生活できます。みなさまに神のご加護がありますように。 - ルマ・ベグンさん(34歳、生徒の母親)
子どもたちのために、衛生的なトイレと井戸ができてとても嬉しいです。これで子どもたちは、汚染された水に起因する病気から解放されます。それに、周りを気にすることなく、トイレを使うことができます。 - ジョシュナ・ベグンさん(32歳、生徒の母親)
まず、JWFとBASCO Foundation によるロイガン村の学校の生徒たちへの安全な飲み水と衛生の支援に感謝します。子どもたちの病気は減るでしょう。また、村の人々も安全な飲み水を得られるようになります。このような選択肢を得られることが夢でした。
児童たちは学校の周りの茂みで用を足す | 完成したピットラトリン |
6.雨水貯留プロジェクト(フィリピン)
プロジェクト概要
・実施団体:Asset-Based Community Development with Equity Foundation (ABCDE Foundation) (#108)
・プロジェクト名:雨水貯留プロジェクト
・実施国・地域:フィリピン、北サンボアンガ州
・実施期間: 2017年10月~2018年3月
・受益者数:240人 (男児109人、女児123人、教師8人)
・実施費用:1,121ドル (JWFファンド1,000ドル、団体の負担121ドル)
フィリピン |
実施地の課題
実施地は山地にあり、湧水や小川といった水源まで遠く離れている。水を汲むためには、1.5時間ほどかけて山を下らなければならない。特に女性にとって、日常的に水を汲みに行き、洗濯などをすることは困難である。また、この地域では常に水が不足しており、住民の健康や衛生、収入面に悪影響を及ぼしている。
プロジェクト実施事項
1)事前説明
2)雨水貯留タンク2基の建設
3)管理組合の設立
4)雨水の管理等に関するトレーニング
これらの活動により、対象地域の住民が安定して水を利用できるようになったため、生活の向上が期待される。
現場からの声
- ノニエ・サマラプさん(31歳、男性)
私の家族や地域の人たちが、雨水貯留タンクを利用できるようになってとても嬉しいです。 - ディオネシア・アニガンさん(42歳、女性)
野菜を育てることが好きで、自宅用のほかに隣人への販売もしています。以前は遠くまで水を汲みに行っていましたが、雨水貯留タンクのおかげでその問題が解決しました。 - マーデル・セガヨさん(26歳、女性)
つい最近息子が生まれ、身の回りをきれいに保ち、子どもの食事を作るための水が必要でした。雨水貯留タンクのおかげでとても助かっています。
住民が水源として利用する川 | 雨水貯留タンクの建設 |
7.グルスム郡、クラマタナ地域における水へのアクセスと衛生に関する意識の改善(エチオピア)(報告書未提出)
プロジェクト概要
・実施団体:Nurture Education and Developmen (NED) (#133)
・活動名:グルスム郡、クラマタナ地域における水へのアクセスと衛生に関する意識の改善
・実施地:エチオピア、ソマリ州
・実施期間:2017年10月~2018年2月
・受益者数:1,040人 (女性420人、男性人350人、子ども270人)
・実施費用:2,199ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者とNED、郡の水関連事務所の負担1,199ドル)
エチオピア |
実施地の課題
実施地域には水供給設備と衛生設備がほとんどなく、水と衛生に関する状況は過酷である。村に住む女性や女児たちは、ロバに乗って2時間以上かけて、小さな川へ水を汲みに行く。しかし、この川の近くで住民たちが野外排泄や洗濯、水浴びをするほか、動物も使用している。このため水源は汚染され、コレラや下痢症、腸チフスといった病気が発生している。
ロバに乗って水汲みに向かう住民 | 水源は動物も使用している |
2018年4月2日、現地団体NEDのMr. Demissew Abiより、国内の民族対立と政権不安定の影響により、本プロジェクトは完了できていないという連絡を受けました。
2018年5月31日現在、NEDからの報告書は受領しておりません。詳細は、現在調査中です。
日本水フォーラム会員の皆さまをはじめ、Charity for Waterにご寄付いただいた皆さま、現地パートナー団体、対象地域の住民の皆さまなど、多くのご支援ご協力により本プロジェクトを実施することができました。ご支援いただき、ありがとうございました。
(報告者:マネージャー 郡司晃江)