JWF ファンド 2016 フォローアップを実施しました!

 

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JWFファンド2016で建設したハンドポンプ付き井戸
(マダガスカル)

 

JWFファンド とは
JWFファンドは、2005年に日本水フォーラムが設立し、独自に運営する助成基金です。
発展途上国の水問題解決のために草の根活動を行っている団体を対象に、毎年プロジェクトを公募し、採択された団体には、1プロジェクト当たり1,000USドルを上限とした支援を実施しています。
この基金は、日本水フォーラムの会費や、一般の方からCharity for Waterに寄せられた寄付等により運営されています。

この助成により、過去13 年間で163 件のプロジェクトを支援し、アジア太平洋、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカでの総受益者数は196,000 名を超えました。

フォローアップとは
JWF ファンドは、現場の課題やニーズに効率的かつ効果的に応えることを念頭に活動しています。JWF ファンド2014 で支援したプロジェクト以降は、現地団体の協力により、フォローアップとして活動終了から約一年後に課題やニーズにどのような変化が見られたか、効果や影響に関する情報収集を実施しています。

JWF ファンド2016 では、トーゴ1 件、マダガスカル1 件、タンザニア1 件、パキスタン1 件、インド2 件の計6 件を支援しました。フォローアップ3 回目となる2017 年は、フォローアップ実施承諾の回答を得たマダガスカル1 件、インド2 件の計3 件の団体の協力のもと、活動完了から約1 年が経過した現場の状況に関する情報を収集しました。

報告書
JWFファンド2016フォローアップ 実施報告書 (日本語) (PDF)
JWFファンド2016フォローアップ 実施報告書 (英語) (PDF)

JWFファンド2016の活動とフォローアップ結果概要

1. 安全な水供給のためのポンプ設置とWASH *1教育(マダガスカル)
(1) JWFファンド2016 プロジェクト概要

・実施団体:Grassroots Climate and Livelihood Actions (GRACLIA) (#108)
・プロジェクト名:安全な水供給のためのポンプ設置とWASH教育
・実施国・地域:マダガスカル、アンツィラナナ州
・実施期間:2016年11月~2017年3月
・受益者数:600人(女性170人、男性180人、子ども250人)
・費用:985.9 USドル(JWFファンドより977.5 USドル、地域住民からの寄付8.4 USドル)

*1:Water, Sanitation and Hygiene

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マダガスカル

実施地の課題
マダガスカルの人口2,200万人のうち、およそ80%は公共サービスや施設がほとんどない農村地域に住んでいる。アンツィラナナのアンパンドロアントシリティ村では、村から数百メートル離れた川で女性や子どもたちが食器洗いや洗濯をしているが、その川の水は同時に飲み水や料理用としても使われている。住民の多くはトイレを持っておらず川近くで排泄するため、川を媒介としてコレラや下痢症、腸チフスなど病気が発生している。さらに川の上流にはゴミの投棄場があり、水が汚染されている。

実施事項
1)事前説明会の実施
2)ハンドポンプ付き井戸を3基設置
3)利用者組合を設立
4)水の浄化に関する啓発活動を実施
5)ゴミ投棄場の清掃

これらの活動により、アンパンドロアントシリティ村の住民が安全な飲み水を利用できるようになったため、汚染された水に起因する病気の減少が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • ハンドポンプ付き井戸
    – 建設した3基のハンドポンプ付き井戸のうち2基は使用されているが、1基は設置場所が不適切であったため、使用されていない
    – 使用されていないハンドポンプ付き井戸は、水田の近くに位置しているため、泥のにおいが増し、特に雨季の後には泥のにおいが強くなる。
    – 2基のハンドポンプ付き井戸の水量は生活用水を得るには不十分である。このため、洗濯や水浴びのために川を利用する住民もいる。住民によると、ハンドポンプ付き井戸から水を汲むのに数分待たなければならず、待ちきれない住民は、飲み水と料理用の水以外の生活用水は、川から得ている。
  • 利用者組合
    利用されている2基のハンドポンプ付き井戸の利用者組合は、機能している。この利用者組合は、修理が必要になったときに住民から修理代に充てるための費用を徴収している。利用者組合のリーダーの取り組みは住民に認められており、苦情は発生していない。
  • ゴミ投棄場
    プロジェクト完了後、村の近くを流れる川の上流にあったゴミ投棄場が閉鎖された。これによる問題は起きていない。もともとは15キロ離れた町の住民がゴミを捨てていたが、今は村の住民が作物栽培のために使用している。
  • 人々の変化
    – 地域の結束はプロジェクトを通じて強固になり、特に機能している2基のハンドポンプ付き井戸は適切に維持管理されている

 

現場からの声

  • バナさん(36歳、女性、利用者組合のリーダー)
    家から遠くない場所でハンドポンプ付き井戸を使えるようになって、私も家族も助かっています。以前料理と飲み水用に使っていた川の水よりずっときれいです。周りの住民と同じようにとても幸せです。おかげでたくさんの人々の生活がよくなりました。
  • ヴェロボダさん(45歳、女性、水の浄化に関する啓発活動の参加者)
    ハンドポンプ付き井戸は私たちにとって重要で、毎日使っています。おかげで生活が楽になりました。以前のように水汲みのために時間を無駄にしなくて済みますし、川の水より良いです。娘に頼まなくても、近くにこの井戸があるおかげで、いつでも自分で水を汲みに行けます。余った時間で娘の勉強を見てあげたり、ほかのことに充てることができます
  • ネラさん(女児、8歳)
    ハンドポンプ付き井戸を使っています。家の近くにあって、遠くまで歩かなくて済むので、この井戸が好きです。私の家族は川の水よりハンドポンプ付き井戸の水を好んでいます。いまは料理用と飲用のためのきれいな水が家にあります。それに、もう学校の帰り道で水を汲みに行く必要はありません
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JWFファンド2016で建設したハンドポンプ

今は使われていないハンドポンプの周辺住民へのインタビュー

 

2. 農業用の水確保のための雨水貯留(インド)
(1) JWFファンド2016 プロジェクト概要
・実施団体:PRAGATI KORAPUT (#424)
・プロジェクト名:農業用の水確保のための雨水貯留(小規模なため池)
・実施国・地域:インド、オリッサ州
・実施期間: 2016年11月~2017年4月
・受益者数: 18世帯102人
・費用:1,366.95 USドル(JWFファンドより983 USドル、地域住民の寄付35 USドル、団体の負担251.5 USドル、他)

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インド

実施地の課題
対象地域では、18世帯の農家が約7ヘクタールの土地で小麦や野菜を栽培している。毎年雨季には一時間当たり150ミリから200ミリの大雨が降り、傾斜地であるこの農地を侵食し、農作物への被害が出る。一方で、乾季には土地が一気に乾燥し、耕作ができなくなる。長年の侵食により土地が痩せ、生産性が低下しており、農家は雨季でさえも農業への意欲が下がり、町へ日雇いとして出稼ぎに出ることを選ぶ人もいる。薪や木炭を売って生計を立てている人もいるが、森林伐採につながっている。

実施事項
1)事前説明会を実施
2)利用者組合を設立
3)雨水貯留施設と排水路を建設

これらの活動により、対象の農家が年間を通じて農作物を栽培できるようになったため、安定した収入を得られることが期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 雨水貯留施設と排水路
    施設の効果:2017年4月のプロジェクト完了後、2017年6月から9月にかけて雨期となった。この期間、建設した施設は雨水の貯留に役立った。豪雨もあったが、これまで地表を流れていた水が設備に流れ込み、余分な水が排水路を通って導水されたことで、農作物と土壌への被害は減った。
  • 利用者組合
    雨水貯留設備の維持管理は、責任を持って参画する利用者組合のメンバーによって適切に行われている。設備の水を農業に使う農家たちは、維持管理や清掃の責任を負っている。
    農家からの要望を基にしてプロジェクトの計画と実施を行ったため、維持管理は農夫たちの責任であると納得して実施している
  • 生活の変化
    農家たちは、年間を通して土地を活用できることで、収穫量の増加や収入の向上が可能になった長期的には、土壌浸食を食い止めるだけでなく、保水力を高め、最終的には土壌を肥沃にし、農作物の生産性向上につながる可能性がある。


現場からの声

  • ラジュ・サンタさん(45歳、男性、約2,000平方メートルの農地を持つ農夫)
    雨水貯留設備の隣にある私の農地では、穀物を栽培しています。プロジェクトのおかげで、以前の3倍の量を収穫できています。自家消費の約6か月分の量になると思うととても嬉しいです。以前森で穀物を育てていたときの収穫量は、自家消費の3か月分にも満たず、市場で穀物を購入していました。
  • ディバカール・ジャニさん(46歳、男性、雨水貯留設備の近くに土地を持つ農夫)
    私は、雨水貯留設備の近くの農地で穀物やトマトを栽培しています。以前は、穀物は自家消費用で、トマトは近くの市場で販売していました。
    雨水貯留設備のおかげで、私の農地と農作物は流出した雨水から守られました。また、雨季の雨が降らない数日も、作物を枯らすことなく水をあげることができました。土壌浸食が減るにつれて、土地の生産性は上がると思います
  • トリナス・サンタさん(25歳、男性)
    私は雨季と乾季に、農作物に水をやるために雨水貯留設備を活用しています。私の家族は、主食である穀物を雨季の間に育てていました。
    もう、私の農地は雨季に土壌浸食の影響を受ける心配はありません。いまは野菜も育てています。住民たちは、雨水貯留の重要性を理解し始めています。私と家族は、今は定期的に作物を育てていて、家族はもう村の外に働きに行く必要はありません。
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2016年に建設した雨水貯留設備
(雨期)

雨水貯留設備の周りの農地を耕す農婦

 

3. 中・高等学校における衛生設備の修繕・建設と水と衛生の促進(インド)
(1) JWFファンド2016 プロジェクト概要
実施団体:PHD Rural Development Foundation (PHDRDF) (#449)
・プロジェクト名:中・高等学校における衛生設備の修繕・建設と水と衛生の促進
・実施国・地域:インド、スィーカル州
・実施期間:2016年11月~2017年4月
・受益者数:直接受益者数272人(女子生徒140人、男子生徒120人、教師12人)、間接受益者数人1,360人
・費用:1,149 USドル(JWFファンド1,000 USドル、団体の負担149 USドル)

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インド

実施地の課題
スィーカル州では、水確保の難しさや、1人あたりの所得の低さが、農村部の人びとの衛生状況に影響を及ぼしている。対象の学校では、衛生設備が破損しており、生徒が使える状況ではない。しかし、学校の財源は乏しく、壊れた衛生設備を修理することができないうえに、水不足によりトイレを使用することもできない状況が続いている。トイレがないために欠席する生徒も見られ、特に女子生徒はトイレのために自宅に帰り、男子生徒たちは野外で用を済ませている。

実施事項
1)事前調査を実施
2)既存トイレを改修
3)手洗い場兼水飲み場を設置
4)水質検査を実施
5)水と衛生に関する委員会を設立
6)水と衛生に関する啓発活動を2回実施
7)事後調査を実施

これらの活動により、学校に通う生徒と教師が年間を通じて水と衛生設備を利用できるようになったため、学校の学習環境の改善が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • トイレ
    – トイレの使用:改修した女子生徒用と男子生徒、教師用のトイレは、生徒と教師が適切に使用している
    生徒と教師には、野外排泄ではなくトイレを使用するという良い行動の変化が表れている特に女子生徒にとっては、排せつのために遠くまで行く必要がなくなり、学校の敷地内で安全にトイレを利用できるようになったことはとても有益である
  • 手洗い場
    女子トイレに建設された手洗い設備は機能しており、手洗い習慣の定着につながった
  • 水飲み場と排水溝
    2016年の水飲み場の改修直後は、飲み水に適していなかったため手洗いのみに使用することとしていた。その後、地域政府の協力による対応が行われ、いまは安全な飲み水を得られるようになった。生徒たちは手洗い用と飲み水にこの水を使用している。
  • 水と衛生に関する委員会
    水と衛生に関する委員会は機能している。昼食前の手洗いと生徒が定期的にトイレを使用し維持するため、教師と生徒が指導している。
  • 受益者の変化
    トイレがきれいに維持されているだけでなく、便利になったことに生徒たちは喜んでおり、学校に通うのが楽しみになっている。
    – 教師たちは清潔さに敏感になり、衛生習慣を守るようになった。生徒に対し、同じように習慣を守るよう指導している。

 

現場からの声

  • サタヤ・ヴェールさん(男性、学校長)
    生徒の間に、従うべき衛生習慣を意識するといった良い変化がありました。生徒たちは手洗いを習慣化し始め、不衛生に起因する病気の発生率が減りました。学校の周囲も以前よりきれいになりました。なにより、生徒たちが以前より定期的に学校に通っています
  • ヴィジャ・プラカシュさん(男性、学校の教師)
    – 私もトイレを使用していますが、便利で安全ということが分かりました。健康を保つため、適切な衛生設備と衛生習慣が学校でも家庭でも重要であるということを理解しました
    – 生徒、特に女児たちはトイレを安全に利用できるようになりました。これにより、毎日の出席率が向上しました。また、生徒たちは、定期的に行われる手洗い講座に参加しています。手洗いの順番が描かれたペイントは、生徒がきちんと自分の手を洗うのに役立っています。
  • アージュン・ラルさん(学校に通う男児)
    学校でトイレを使えるようになってとても嬉しいです。以前は学校でトイレが使えず、近くの野原に行かなければいけませんでした。また、学校の手洗い場や水飲み場もさび付いていて安全ではありませんでした。僕も友達も学校の中でトイレが使えるようになったこと、そして色鮮やかなペイントの水飲み場で手が洗えてとても嬉しいです。
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2016年に改修した女子トイレ手洗い講習のようす

 

日本水フォーラムの会員の皆様、並びにCharity for Waterごへ寄付頂いた皆様のご支援とご協力に感謝いたします。
引き続き、ご関心をお寄せいただけますと幸いです。

(報告者:マネージャー 郡司晃江)

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