JWF ファンド 2018
JWFファンドは、発展途上国の水問題解決のために草の根活動を行っている団体を支援する基金で、2005年の開始から2018年で14年目となります。
この基金は日本水フォーラムの会費や、一般の方から寄せられた寄付により運営されています。
2018年度の募集では、41カ国から408件の応募がありました。選考の結果、本年度は5カ国7件のプロジェクトに対し支援を実施することを決定しました。
募集概要
公募期間:2018年6月1日~7月31日18時
応募件数:408件、41カ国
支援件数:7件、5カ国 (シエラレオネ1件、ラオス1件、マラウイ2件、ウガンダ2件、コンゴ民主共和国1件)
支援する活動は、公募に対し応募のあった408件からJWF職員が選考し決定しました。
JWFファンド 2018 支援先
1.活動名:2つの学校における、VIPトイレ2基の建設と良い衛生習慣の教育(シエラレオネ)
(原文):Good Sanitation Facility is Life (Construction of 2 Pit Latrines and Good hygiene practice education in 2 Schools)
活動概要
・実施団体:Economic Empowerment and Human Rights Sierra Leone (EEHRSL) (#130)
・実施地:シエラレオネ、ボンバリ地区
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:582人 (女児256人、男児312人、女性10人、男性4人)
・費用:2,154ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者300ドル、実施団体854ドル)
シエラレオネ |
実施地の課題
シエラレオネの農村地域にある学校では、衛生設備(トイレ)と衛生教育の不足が大きな課題となっている。対象の2つの小学校には568人の児童が通っているが、この学校には衛生設備がない。児童たちは校舎の裏で野外排泄をし、その糞便を犬やアヒル、鳥が餌としている。女子児童たちは野外排泄に抵抗があり学校に行きたがらない。このことが、多くの女子児童たちの中退につながっている。
EEHRSLによる近年の調査と地区保健管理チームの推定によると、シエラレオネ国内で7人に1人が野外排泄をしており、その75%が貧しい農村部で暮らしている。糞便による水源の汚染も問題であり、汚染された飲み水がウイルス性胃腸炎やウイルス性肝炎、腸チフス、コレラの流行、下痢症といった病気の原因になっている。結果として、小学校の児童や地域住民がその危険にさらされている。
活動内容
地域関係者との会議の実施、VIPトイレ*2基と手洗い設備2基の建設、良い衛生習慣に関するトレーニングを2回実施、衛生キャンペーンを3回実施
*Ventilated Improved Pit Latrine:換気改良式竪穴便所
活動予定地の現在の様子
対象の小学校の校舎と児童たち |
学校の敷地内で野外排泄をしている |
2.バンペン村での水供給の改善(ラオス)
(原文):Water supply improvement in rural village of Ban Paen, Phoukout District, Xiengkhouang Province, Laos
活動概要
・実施団体:Ban Paen Environmental Protection and Development Group (BPE) (#133)
・実施地:ラオス、シエンクワーン県
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:189人 (女性65人、男性50人、子ども74人)
・費用:4,000ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者1,500ドル、実施団体1,500ドル)
ラオス |
実施地の課題
山岳民族を含む125世帯600人以上が暮らすバンペン村では、頻繁に水不足が起こっている。水不足解決のため、2010年にはUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)とUNDP(国際連合開発計画)からの資金協力で、3つの給水プロジェクトが実施された。しかし、村の人口が増えている一方で、気候変動の影響によって給水プロジェクトで設置したパイプラインから得られる水の量は減っている。また、配管が何者かによって破壊されたため、給水ができなくなっている。
その結果、2015年以降、住民の大半と村の学校は水不足に苦しんでいる。現在、モンスーンの時期でさえ得られる水の量はわずかである。水不足は村の人々の生活に影響しており、幼い女の子でさえ家族のために遠くの井戸まで水を汲みに行かなければならない。さらに、学校に通う子どもたちは、家から学校のトイレ清掃用の水を持っていかなければならない。
活動内容
住民との事前協議と活動実施の承認、地域に関する調査の実施、既存の貯水池1か所の拡張、給水配管の修理と埋設
活動予定地の現在の様子
水源として使用する貯水池 |
壊された給水配管 |
3.マレウレ地域における掘抜き井戸の修繕プロジェクト(マラウイ)
(原文):Maleule Boreholes Repair Project
活動概要
・実施団体:Centre for Climate Change and Environment Management (CCCEM) (#172)
・実施地:マラウイ、ブランタイヤ県
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:1,350人(女性350人、男性300人、子ども700人)
・費用:1,543ドル (JWFファンド996ドル、受益者249ドル、実施団体298ドル)
マラウイ |
実施地の課題
マレウレ地域には、共有の井戸が5つあるが、そのうち3つからは水が出なくなっている。井戸を開けてその原因を調べたところ、気候変動の影響で乾期の地下水位が下がっている事が分かった。2,000人以上の住民が残りの2つの井戸を共同利用しており、順番待ちに多くの時間を費やされている。対象のチヨンガ村に住む住民たちは、列に並ぶことを諦めて5キロ離れた場所まで水を汲みに行っている。
活動内容
地域住民の動員、既存井戸2基の修繕、排水溝と洗濯場の修繕、維持管理委員会の設立、維持管理に関するトレーニングの実施、水と衛生と資金調達に関するトレーニングの実施、水質検査の実施
活動予定地の現在の様子
水を汲むために既存井戸へ集まる住民たち |
修理予定の既存井戸 |
4.パランクワリ地域での井戸の建設(マラウイ)
(原文):Construction of water well at Palankhwali area
活動概要
・実施団体:Friends of Compassion (Fricom) (#372)
・実施地:マラウイ、ドーワ県
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:1,051人 (女性288人、男性353人、子ども410人)
・費用:2,950.3ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者710ドル、実施団体1,240.3ドル)
マラウイ |
実施地の課題
パランクワリ地域にあるピンデンオンベ村とカウォラムワジ村の水問題は、村の中に水源がなく、現在利用している水源が村から遠く離れていることである。村人たちは約1.5キロ離れた池に毎日水を汲みに行き、その水を飲み水や料理、洗濯、沐浴に使用している。このような状況が、村の人々の健康や社会経済的な面に影響を及ぼしている。
健康の面では、池の水を飲み水として使用する大人や子どもたちが病気にかかっており、年間でこの地域の総人口の25%が汚染された水に起因する病気にかかっている。また、社会経済の面では、毎年の収入の15%が家族の病気の治療に費やされている。また、女性や子どもたちは遠くまで水を汲みに行くことに1日あたり約2.5時間を費やしており、子どもたちの登校率に悪影響を及ぼしている。
活動内容
関係者との会議の実施、手掘り井戸1基を建設、井戸管理委員会の設立、維持管理に関するトレーニングの実施、維持管理体制の構築、衛生に関する啓発活動の実施、水質検査の実施
活動予定地の現在の様子
住民が水源として利用する池 |
池から水を汲む子ども |
5.キワニ地域での湧水保護と水と衛生習慣に関する啓発(ウガンダ)
(原文):Construction and protection of Kiwanyi community spring and massive community sensitization on water and sanitation
活動概要
・実施団体:Kiwanyi health centre-Group (#029)
・実施地:ウガンダ、イガンガ県
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:3,400人 (女性1,200人、男性500人、子ども1,700人)
・費用:1,400ドル (JWFファンド790ドル、受益者230ドル、実施団体380ドル)
ウガンダ |
実施地の課題
キワニ村の住民たちは、村の外にあるため池の水を飲み水やその他生活用水に使用している。しかし、このため池は保護されていないため汚染されやすく、安全でない。また、2018年4月に実施した訪問調査では、村の中にいくつかのトイレや水浴び小屋、ゴミ捨て場といった衛生設備が建設され、住民が利用していたが、手洗い場はなかった。キワニ地域保健センターの調査によると、この村に住む住民の6人に1人が下痢症または皮膚病に、26人に1人が眼の感染症にかかっている。
活動内容
関係者との会議、ため池保護設備の建設、水と衛生に関する啓発活動を6回実施、病気の予防に関するトレーニングの実施、利用者組合の設立、水質検査の実施
活動予定地の現在の様子
住民が水源として利用するため池 |
6.湧水設備の修繕と衛生習慣の向上、女性利用者のトレーニング(ウガンダ)
(原文):Maintenance of spring wells, awareness on hygiene and training of village women water users in Padolo parish
活動概要
・実施団体:Community Uplift and Welfare Development (CUWEDE) (#053)
・実施地:ウガンダ、ネビ県
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:800人 (女性500人、男性150人、子ども150人)
・費用:1,800ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者300ドル、実施団体500ドル)
ウガンダ |
実施地の課題
セントラル村とオリャング村の住民は、アリモとアメレンジュ・アヴブにある保護された湧水を飲み水や料理、洗濯といった生活用水の水源として利用しているが、保護設備は荒廃し、泥だらけで錆びてしまっている。さらに、利用者による維持管理がきちんとされていないため、蚊の繁殖によるマラリア等の病気や、その他の汚染された水に起因する病気が発生する可能性が高まっている。
直近の4年間、セントラル村とオリャング村では、特に赤痢や腸チフス、B型肝炎、下痢症、アメーバ感染症、コレラといった汚染された水に起因する病気が過去最多で発生している。
活動内容
既存湧水保護設備2か所の修繕、設備利用者の意識啓発活動の4回実施、維持管理計画の策定、水と衛生に関するトレーニングの実施、水質検査の実施
活動予定地の現在の様子
アリモにある給水設備 | アメレンジュ・アヴブにある給水設備 |
7.命を救うためのングマ市場のトイレ建設(コンゴ民主共和国)
(原文):Latrine sauveuse des vies au marché de NGUMA
活動概要
・実施団体:Congrès de Jeunes pour la Paix et le Développement (COJEPAD) (#233)
・実施地:コンゴ民主共和国、南キヴ州
・実施期間:2018年10月~2019年2月
・受益者数:316人 (女性120人、男性111人、子ども85人)
・費用:1,497ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者150ドル、実施団体347ドル)
コンゴ民主共和国 |
実施地の課題
隔週で開かれるングマ市場は、周辺の住民が唯一食料を調達できる場である。この市場にはトイレがないため、販売者や利用者は、茂みで用を足している。食物を使う環境にも関わらず、手洗い場はない。無秩序な野外排泄により、水源だけでなく商品も汚染されるうえに、コレラや腸チフス、アメーバ赤痢などの病気が報告されている。
保健所の2016年の報告書によると、ングマ村は汚染された水に起因する病気が多く報告されている村の一つである。49%の世帯がコレラ発生の影響を受け、全世帯が何かしらの汚染された水に起因する病気にかかっている。また、この市場へ頻繁に訪れる周辺の住民もまた、影響を受けている。
活動内容
地域住民を交えた会議の実施、ピットラトリン*2基の建設、手洗い場1か所の建設、野外排泄場所の清掃、公衆衛生と水と衛生に関する啓発活動の実施、維持管理委員会の設立、維持管理に関するトレーニングの実施
*Pit latrine:落とし込み式の簡易トイレ
活動予定地の現在の様子
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実施団体より取り寄せ中 |
(報告者:マネージャー 郡司晃江)